勤め先でFAXを使って送ったり受けたりしている書類は、報告・連絡書が59.2%、受発注書が48.6%で、この2つが上位だった。どちらも決まった形の書類で、工程03・04で移す対象になる。
出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(2024年1月)
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作成: 中川 健太(作家・中川)公開: /更新:
中小企業の経営者のための FAXと紙のやり取りをなくす
FAXで届いた注文や書類を、パソコンに打ち直す。届くFAXの多くが、広告などの迷惑FAX。送り先を間違えないか、毎回気を使う。製造業の受注業務の担当者への調査では、FAXで書類を受け取っている人の88.4%が「FAXでのやり取りをやめたい」と答えました。やめたいと答えた人が、やめられない理由に最も多く選んだのは、「取引先がFAXを利用しているため、他のツールに移行できない」(63.0%)です。FAXは、一度にはやめられません。まず、届くFAXを減らし、打ち直しを自動にします。使うのは、紙やFAXの文字をAIで読み取ってデータにする仕組みで、AI-OCRと呼びます。次に、取引先ごとに、FAXのやり取りをデータでのやり取りに移します。相手の多くがそろったら、FAXをやめます。
この資料の結論
製造業の受注業務の担当者への調査では、FAXでのやり取りをやめたいと答えた人の63.0%が、やめられない理由に「取引先がFAXを利用しているため、他のツールに移行できない」を選びました(AI inside・AIの読み取りサービスを提供する会社の調査)。FAXは、相手がいるやり取りです。自社だけが変えても、相手がFAXで送ってくる限り、FAXは残ります。国が業界ごと移そうとしている例が、介護です。介護の事業所どうしは、ケアプラン(介護サービスの計画)にもとづく予定や実績の表を、FAXや郵送、手渡しの紙でやり取りしてきました。国は、これをデータで送り合う仕組みとして、ケアプランデータ連携システムを用意し、2023年4月に本稼働させました。導入率は、2025年1月末の4.8%から、2026年7月末の53.1%に上がりました(厚生労働省。その時点で有効なライセンス、つまり利用の権利の数から算出)。このシステムは、制度でも後押しされています。1つは、2024年度(令和6年度)の介護報酬の改定です。ケアマネジャー(介護の計画を作る専門職)がケアプランを作る仕事を、居宅介護支援と呼びます。その報酬の1つ「居宅介護支援費(Ⅱ)」には、ケアマネジャー1人あたりの担当件数が多い時に報酬が下がる決まりがあります。この決まりを緩める条件に、事務職員の配置とあわせて、このシステムの活用が入りました。もう1つは、2026年度(令和8年度)の処遇改善加算(介護職員などの給料を上げるための報酬の上乗せ)です。訪問・通所サービスなどが上乗せの区分をとるための特例の要件の1つに、このシステムへの加入が入りました。ライセンス料を無料にする「フリーパスキャンペーン」も、2027年1月に予定されている別のサービスとの統合まで延長されています。どの業界でも、相手が移る理由と、移る負担を軽くする手当てを、一緒に用意します。
FAXをやめられない取引先が残っても、届いた後の手間は減らせます。建設業の中遠外構(従業員7人)では、全部門でFAXを確かめる作業のうち、8割が迷惑FAX(頼んでいない広告などのFAX)でした。中遠外構は、文字の読み取りの仕組み(OCR)とサーバーを入れて、届いたFAXの整理と閲覧のやり方を作り直し、FAXを確かめる作業を1か月あたり21.5時間減らしたとしています。まず、迷惑FAXを減らし、残ったFAXはAI-OCRで読み取って、打ち直しを減らします。そのうえで、取引先ごとに移し、最後にやめます。
新しい仕組みを入れても、すぐにはFAXがなくなりません。データで届く相手と、FAXで届く相手の両方を受ける期間が続きます。この資料では、これを二重の作業と呼びます。米子市(鳥取県)が市内の介護事業所に行ったケアプランデータ連携システムのアンケートでは、導入したが活用が不十分などと答えた事業所のうち、10事業所が、理由に「普及率が低くメリットが小さい」を選びました。自由記述には「現状は業務量が増えただけの状態」という声もありました。厚生労働省も、導入初期は事務効率が悪化する場合もあるとしています。二重の作業の期間に人手を足し、相手の多くがそろう時期と、FAXをやめる日を、前もって決めておきます。
症状チェック / 約3分
当てはまる症状が多い工程ほど、見直す余地が大きくなります。当てはまった数が最も多い工程を、最初に見る工程として示します。6つの工程すべてに当てはまった時は、工程01から順に見ることを勧めます。
6つの工程
FAXのやり取りを書き出し、届いた後の手間を減らす。注文と報告・連絡のやり取りを、取引先ごとに移す。相手の多くがそろったら、FAXをやめる。工程01の棚卸しの表が、後の工程すべての土台になります。
改善の定石
業務改善の定石は、なくす・まとめる・入れ替える・仕組みにする、の順に考えることです(英語の頭文字から ECRS と呼びます)。FAXでも考え方は同じです。要らない送り先と迷惑FAXをなくし、注文や報告の書式を1つにまとめ、FAXをデータでのやり取りに替え、新しい取引先とは最初からデータで、と決まりにします。生成AIを使うのは、その後です。
注文や報告のように決まった形のやり取りは、受発注の仕組みや業界の仕組みの方が確実です。FAXの文字の読み取りも、AI-OCRという専用の仕組みに任せます。生成AIは、取引先へのお願いの文書や、新しい手順の説明書を下書きする、といった文章を読み書きする場所で使います。
勤め先でFAXを使っている人のうち、報告・連絡書をFAXで送ったり受けたりしている人の割合です。受発注書は48.6%でした(複数回答)。決まった形の書類が多いので、まず書式をまとめ、それからデータでのやり取りに替えるのが定石です。民間の調査のため、参考値として示します。
出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(調査は2024年1月・勤め先でFAXを使っている人1,000人・民間の調査)
何を、誰と、どれだけやり取りしているか
FAXは昔から使っているので、特に困っていません。
FAXで、何を、どの取引先と、どれだけやり取りしているか。これが分からないと、どこから減らし、どこから移すかが決まりません。届くFAXと送るFAXを、一定の期間すべて書き出す工程です。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
勤め先でFAXを使って送ったり受けたりしている書類は、報告・連絡書が59.2%、受発注書が48.6%で、この2つが上位だった。どちらも決まった形の書類で、工程03・04で移す対象になる。
出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(2024年1月)
勤め先で文書や画像を送ったり受けたりするのにFAXを「日常的に使用している」(18.5%)か「たまに使用している」(21.6%)と答えた人の割合。「使用したことはない」は40.9%だった。
出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(2024年1月)
経営への影響手間と費用が見えないまま、FAXが続く。どの取引先から移せばよいかが決まらず、見直しが始まらない
どの取引先から移すかは、取引の大きさと相手の事情を知る人が決める。FAXの中身に個人の情報や取引の条件がある時は、AIに入れるのは使ってよいサービスを決めてから。
自動の読み取り(AI-OCR)
FAXの打ち直しは、事務の人がやってくれています。
取引先がFAXのままでも、届いた後の手間は減らせます。迷惑FAXを減らし、残ったFAXはAI-OCRで読み取って、打ち直しを減らす工程です。取引先が移るのを待たずに、効果が出ます。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
全部門でFAXを確かめる作業のうち、8割が迷惑FAXで、仕分けに時間がかかっていた。文字の読み取りの仕組み(OCR)とサーバーを入れて、届いたFAXの整理と閲覧のやり方を作り直し、FAXを確かめる作業を1か月あたり21.5時間減らしたとしている。市のデジタル化の支援事業の事例。
出典: 袋井市(静岡県)「令和7年度 袋井市中小企業等デジタル化推進業務 DX事例集」(新しいタブで開きます)(2026年3月)
取引先からの注文の約9割がFAXで、月2,000件近い受注を5人で打ち直していた。AI-OCRを入れ、受注の9割をAI-OCRで処理するようになった。作業時間は3分の1程度短縮され、残業時間も大幅に減ったとしている。
経営への影響事務の時間が、迷惑FAXの仕分けと打ち直しに取られる。打ち間違いが、納品や請求の誤りにつながる
読み取った数字や品名が正しいかは、人が確かめる。読み取りの結果を、確かめないまま注文や請求に使わない。
インターネットでの受発注へ
お客さんがFAXで注文してくるので、こちらからは変えられません。
FAXで届く注文を、データで届く形に移す工程です。卸、飲食、製造など、注文の多い業界ほど効果が出やすくなります。インターネットの画面で注文を出したり受けたりする仕組みを、Web受発注と呼びます。会社どうしで、注文などのデータを決まった形でやり取りする仕組みは、EDI(電子データ交換)と呼びます。在庫や原価まで見直すなら、業務別の資料「受発注・在庫・原価」もあわせて見てください。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
FAXと電話が中心だった注文の受け付けに、受発注のシステムを入れ、注文の約95%がそのシステム経由になった。残ったFAXやメールの注文はAI-OCRで読み取る。受発注のシステムやAI-OCRなどを段階的に入れた後、残業時間が88%減ったとしている。
出典: 中小機構(中小企業基盤整備機構)の導入事例紹介「ここからアプリ」(新しいタブで開きます)(2026-03-25)
仕入れ品をFAXで発注し、商品の間違いや発注漏れ、届いたかを電話で確かめる手間があった。受発注プラットフォーム(取引先との注文をインターネット上でまとめて行うサービス)に移し、取引先の大半もこれに応じた。全店の仕入れ品をそろえた結果、1年の仕入れ額が500〜600万円減ったとしている。
経営への影響注文を受けるたびに、打ち直しの手間がかかる。見落としや打ち間違いが、取引先の信用を損なう
どの仕組みを使うか、取引先にどんな条件で移ってもらうかは、人が決める。取引の条件や単価をAIに入れるのは、使ってよいサービスを決めてから。
介護・医療・建設などの書類
相手が役所や病院なので、FAXをやめるのは無理です。
注文のほかに、報告や連絡の書類もFAXで行き来しています。介護の事業所どうしのケアプランや実績の表、病院・薬局・役所との書類、建設の元請けと協力会社の日報や図面。こうした書類を、データでのやり取りに移す工程です。
ケアプランデータ連携システムの導入率です。2025年1月末の4.8%から、2026年7月末の53.1%に上がりました(その時点で有効なライセンスから算出)。厚生労働省の資料は、紙でやり取りしていた場合と比べて、作業時間が約3分の1、経費が約2分の1になるという調査研究の試算を示しています。この数字は試算による見込みで、実績ではありません。
出典: 厚生労働省 老健局「ケアプランデータ連携システムの統合と介護情報基盤(介護保険資格確認等WEBサービス)について」(新しいタブで開きます)(令和8年8月)
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
提供票(介護サービスの予定と実績を、事業所どうしで伝える表)の印刷からFAX・郵送までに約1日かかり、送り間違いにも気を使っていた。2023年4月の本稼働の後、早い段階でケアプランデータ連携システムを使い始め、毎月万単位でかかっていた紙代・印刷費・送信費・郵送費がかなり抑えられ、送り間違いも減ったとしている。一方で、導入している事業所が思ったより少なかったとも述べている。
出典: 国民健康保険中央会 ケアプランデータ連携システム ヘルプデスクサポートサイトのインタビュー(新しいタブで開きます)
経営への影響同じ書類を、送る前と届いた後に何度も書き写す。紙の書類を探す時間がかかる。送り間違いで、個人の情報が外に出る危険がある
利用者や患者の情報を、AIに入れない。業界の仕組みを使う条件と、国や自治体の補助の条件は、所管する役所の最新の案内で確かめる。
声のかけ方・二重の作業の期間
取引先に「FAXをやめてくれ」とは、言いにくいです。
FAXは、相手がいるやり取りです。取引先に声をかけ、相手の多くがそろうまでの二重の作業の期間を乗り切る工程です。
製造業の受注業務の担当者への調査で、FAXでのやり取りをやめたいと答えた人(208人)のうち、やめられない理由に「取引先がFAXを利用しているため、他のツールに移行できない」を選んだ人の割合です(複数回答)。FAXで書類を受け取っている人(235人)の88.4%が、「FAXでのやり取りをやめたい」と答えていました。AIの読み取りサービスを提供する会社の調査のため、参考値として示します。
出典: AI inside(新しいタブで開きます)(AIの読み取りサービスを提供する会社)のプレスリリース(2024年8月29日。製造業の受注業務の担当者329人への調査)
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
鳥取県の令和7年度のモデル事業で、県と先に導入した事業所、支援会社が一緒に、取引のある近くの事業所に声をかけた。八頭町では、ケアプランデータ連携システムの導入率が、実施前の4%から実施後の58%に上がったとしている(北栄町は24%から64%)。
出典: TRAPE(介護事業所の生産性向上を支援する会社。鳥取県のモデル事業を受託)のプレスリリース(新しいタブで開きます)(2026-04-30)
受注の4割ほどはWeb受発注などでデータにしていたが、情報が漏れる心配からFAXでの発注を続けたい取引先も一定数いた。月5,500枚のFAXの発注書をAI-OCRで読み取る形にし、1人1日1時間30分かかっていた受注の計上(システムに入れる作業)が30分短くなったとしている。取引先が移らない部分は、工程02に戻って手間を減らした例。
経営への影響二重の作業が長引き、手間も費用も増える。社内に「入れても無駄だった」という空気が残り、次の見直しが進まない
どの取引先に、いつ、どんな条件で頼むかは、人が決める。取引先との話し合いは、人が行う。
番号の扱い・送り間違いと個人情報
回線が終わるそうなので、その時にFAXもやめればよいと思っています。
相手の多くがそろったら、自社で日を決めて、FAXをやめる工程です。やめるのは、手間と費用と、送り間違いの危険を減らすためです。回線のサービスが終わるのを待つ必要はありません。INSネット(NTTのデジタルの電話回線)は、2028年12月31日に関連サービスの提供をすべて終える予定です。それでも、普通のFAX(G3と呼ぶ種類)は、加入電話などの電話回線で使い続けられます。使えなくなるのは、INSネットのデジタル通信で送る種類のFAX(G4)です。待っていても、FAXは終わりません。なお、INSネットの回線にFAXをつないでいる会社は、回線の切り替えが要ります。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
イベントの参加申込書や、助成金の審査中の追加の資料をFAXで受けていたが、業務の効率化と個人情報の漏えい防止のため、FAXでの取り扱いをやめ、担当ごとのメールアドレスに替えた。メールが使えない事業所からは、相談を受けるとしている。効果の数字は示されていない。
政府が示した、FAXの利用を見直す方針を踏まえ、2025年3月末でFAXの利用を原則やめ、連絡先を担当ごとのメールアドレスに替えた。名刺やメールの署名に載ったFAXの番号には届かなくなることを、前もって知らせた。効果の数字は示されていない。
出典: 日本河川協会「FAX利用廃止のお知らせ」(新しいタブで開きます)(2025年3月)
経営への影響やめる日が決まらないまま、FAXの機械と回線の費用が続く。送り間違いで個人の情報が外に出ると、相手と会社の信用を損なう
やめる日と、番号を残すかは、経営者が決める。電話の契約の変更は、契約している通信会社の案内で確かめる。
全体像
6つの工程の「いま」と「改善後」、そして効果を確かめる指標を一覧にします。
何を誰とやり取りしているかが分からないと、減らす所も、移す順番も、やめる日も決まりません。見直しは、工程01から順に進めます。工程02は、取引先が移るのを待たずに効果が出ます。生成AIのルールは、並行して始めて構いません。
FAXの手間と費用が見える。迷惑FAXの仕分けと打ち直しの時間が減る。
注文と報告・連絡の多くが、データで届く。打ち間違いと送り間違いが減る。
二重の作業の期間が終わる。FAXの機械と回線の費用がなくなる。
効果の測り方
経営層に報告するのは一番上の層です。「入れた仕組みの数」や「AIの利用回数」は活動の量であって、成果ではありません。FAXをなくす効果は、枚数と時間で測ります。着手前に数え、数えた時期を書いておきます。
琉球ワークス(土産品の卸、従業員35人)で、受発注のシステムを入れた後に、そのシステム経由で届くようになった注文の割合です。AI-OCRなども段階的に入れた後、残業時間は88%減ったとしています。注文のうちFAX以外で届く割合を測れば、移り具合が数字で分かります。
出典: 中小機構(中小企業基盤整備機構)の導入事例紹介「ここからアプリ」(新しいタブで開きます)(2026-03-25)
進め方
期間は、社員数十人の会社を想定した目安です。取引先の数と、相手が移る早さで変わります。最初の1か月で、FAXのやり取りを書き出し、迷惑FAXを減らすところまで進めます。
生成AIのルールづくりは、ほかの段階を待たずに始めて構いません。取引の条件や個人の情報が、個人の判断でAIに入れられている状態を早く終わらせる方が安全です。
経営判断
FAXをなくす見直しは、取引先との関係に関わるため、担当者の努力だけでは先に進めなくなる所があります。次の5つは、担当者の権限では決められません。