← 作家・中川|業務とITの見直し相談 / 業務別の資料

作成: 中川 健太(作家・中川)公開: /更新:

中小企業の経営者のための FAXと紙のやり取りをなくす

そのFAX、相手も本当は送りたくないかもしれません。

FAXで届いた注文や書類を、パソコンに打ち直す。届くFAXの多くが、広告などの迷惑FAX。送り先を間違えないか、毎回気を使う。製造業の受注業務の担当者への調査では、FAXで書類を受け取っている人の88.4%が「FAXでのやり取りをやめたい」と答えました。やめたいと答えた人が、やめられない理由に最も多く選んだのは、「取引先がFAXを利用しているため、他のツールに移行できない」(63.0%)です。FAXは、一度にはやめられません。まず、届くFAXを減らし、打ち直しを自動にします。使うのは、紙やFAXの文字をAIで読み取ってデータにする仕組みで、AI-OCRと呼びます。次に、取引先ごとに、FAXのやり取りをデータでのやり取りに移します。相手の多くがそろったら、FAXをやめます。

勤め先でFAXを使っている人が、FAXで送ったり受けたりしている書類(複数回答・上位2つ)
報告・連絡書59.2%
受発注書48.6%
勤め先でFAXを使っている人のうち、報告・連絡書を送ったり受けたりしている人は59.2%、受発注書は48.6%でした。どちらも、決まった形の書類です。出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(調査は2024年1月・勤め先でFAXを使っている人1,000人・民間の調査)

この資料の結論

FAXをなくす要点は、3つです。

自分だけやめても終わらない。取引先と一緒にやめる段取りを

製造業の受注業務の担当者への調査では、FAXでのやり取りをやめたいと答えた人の63.0%が、やめられない理由に「取引先がFAXを利用しているため、他のツールに移行できない」を選びました(AI inside・AIの読み取りサービスを提供する会社の調査)。FAXは、相手がいるやり取りです。自社だけが変えても、相手がFAXで送ってくる限り、FAXは残ります。国が業界ごと移そうとしている例が、介護です。介護の事業所どうしは、ケアプラン(介護サービスの計画)にもとづく予定や実績の表を、FAXや郵送、手渡しの紙でやり取りしてきました。国は、これをデータで送り合う仕組みとして、ケアプランデータ連携システムを用意し、2023年4月に本稼働させました。導入率は、2025年1月末の4.8%から、2026年7月末の53.1%に上がりました(厚生労働省。その時点で有効なライセンス、つまり利用の権利の数から算出)。このシステムは、制度でも後押しされています。1つは、2024年度(令和6年度)の介護報酬の改定です。ケアマネジャー(介護の計画を作る専門職)がケアプランを作る仕事を、居宅介護支援と呼びます。その報酬の1つ「居宅介護支援費(Ⅱ)」には、ケアマネジャー1人あたりの担当件数が多い時に報酬が下がる決まりがあります。この決まりを緩める条件に、事務職員の配置とあわせて、このシステムの活用が入りました。もう1つは、2026年度(令和8年度)の処遇改善加算(介護職員などの給料を上げるための報酬の上乗せ)です。訪問・通所サービスなどが上乗せの区分をとるための特例の要件の1つに、このシステムへの加入が入りました。ライセンス料を無料にする「フリーパスキャンペーン」も、2027年1月に予定されている別のサービスとの統合まで延長されています。どの業界でも、相手が移る理由と、移る負担を軽くする手当てを、一緒に用意します。

「なくす」の前に、「減らす・自動にする」

FAXをやめられない取引先が残っても、届いた後の手間は減らせます。建設業の中遠外構(従業員7人)では、全部門でFAXを確かめる作業のうち、8割が迷惑FAX(頼んでいない広告などのFAX)でした。中遠外構は、文字の読み取りの仕組み(OCR)とサーバーを入れて、届いたFAXの整理と閲覧のやり方を作り直し、FAXを確かめる作業を1か月あたり21.5時間減らしたとしています。まず、迷惑FAXを減らし、残ったFAXはAI-OCRで読み取って、打ち直しを減らします。そのうえで、取引先ごとに移し、最後にやめます。

移り始めは、手間が増える。相手の多くがそろうまでを乗り切る計画を

新しい仕組みを入れても、すぐにはFAXがなくなりません。データで届く相手と、FAXで届く相手の両方を受ける期間が続きます。この資料では、これを二重の作業と呼びます。米子市(鳥取県)が市内の介護事業所に行ったケアプランデータ連携システムのアンケートでは、導入したが活用が不十分などと答えた事業所のうち、10事業所が、理由に「普及率が低くメリットが小さい」を選びました。自由記述には「現状は業務量が増えただけの状態」という声もありました。厚生労働省も、導入初期は事務効率が悪化する場合もあるとしています。二重の作業の期間に人手を足し、相手の多くがそろう時期と、FAXをやめる日を、前もって決めておきます。

症状チェック / 約3分

自社に当てはまるものを、選んでください。

当てはまる症状が多い工程ほど、見直す余地が大きくなります。当てはまった数が最も多い工程を、最初に見る工程として示します。6つの工程すべてに当てはまった時は、工程01から順に見ることを勧めます。

6つの工程

FAXと紙のやり取りを、6つの工程でなくす。

FAXのやり取りを書き出し、届いた後の手間を減らす。注文と報告・連絡のやり取りを、取引先ごとに移す。相手の多くがそろったら、FAXをやめる。工程01の棚卸しの表が、後の工程すべての土台になります。

改善の定石

まず「なくす」「まとめる」。生成AIは最後。

業務改善の定石は、なくす・まとめる・入れ替える・仕組みにする、の順に考えることです(英語の頭文字から ECRS と呼びます)。FAXでも考え方は同じです。要らない送り先と迷惑FAXをなくし、注文や報告の書式を1つにまとめ、FAXをデータでのやり取りに替え、新しい取引先とは最初からデータで、と決まりにします。生成AIを使うのは、その後です。

  1. ELIMINATEなくす迷惑FAX、確認のための送り返し、誰も読まない書類は、本当に要るか。
  2. COMBINEまとめる取引先ごとにばらばらの注文書と報告書を、1つの書式に。
  3. REARRANGE入れ替える打ち直しを、自動の読み取りへ。FAXを、データでのやり取りへ。
  4. SIMPLIFY仕組みにする移す順番、二重の作業の期間、FAXをやめる日を、計画と決まりで。
  5. + GENERATIVE AI生成AI残った「人が文章を読み、書く」部分を支える。

何でもAIに任せない。生成AIが向くのは真ん中だけ。

注文や報告のように決まった形のやり取りは、受発注の仕組みや業界の仕組みの方が確実です。FAXの文字の読み取りも、AI-OCRという専用の仕組みに任せます。生成AIは、取引先へのお願いの文書や、新しい手順の説明書を下書きする、といった文章を読み書きする場所で使います。

59.2%

勤め先でFAXを使っている人のうち、報告・連絡書をFAXで送ったり受けたりしている人の割合です。受発注書は48.6%でした(複数回答)。決まった形の書類が多いので、まず書式をまとめ、それからデータでのやり取りに替えるのが定石です。民間の調査のため、参考値として示します。

出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(調査は2024年1月・勤め先でFAXを使っている人1,000人・民間の調査)

決まった形でやり取りするシステム
  • Web受発注(ホームページからの注文)とEDI(電子データ交換)での注文
  • ケアプランデータ連携システムでの書類
  • AI-OCRでのFAXの読み取り
  • FAXのやり取りの棚卸しの表
文章を読み、案を作る生成AI
  • 取引先へのお願いの文書の下書き
  • 取引先からの質問への答えの案
  • 新しい手順の説明書の下書き
  • 棚卸しのメモの整理
責任を伴う人
  • どの取引先から移すかの判断
  • 取引先との話し合い
  • 読み取った数字と送り先の確認
  • FAXをやめる日の決定
工程 01 / 06

FAXのやり取りの棚卸し

何を、誰と、どれだけやり取りしているか

FAXは昔から使っているので、特に困っていません。

FAXで、何を、どの取引先と、どれだけやり取りしているか。これが分からないと、どこから減らし、どこから移すかが決まりません。届くFAXと送るFAXを、一定の期間すべて書き出す工程です。

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

59.2%
情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ・通信機器の業界団体)の調査(2024年1月・勤め先でFAXを使っている人1,000人・複数回答・民間の調査)
調査

勤め先でFAXを使って送ったり受けたりしている書類は、報告・連絡書が59.2%、受発注書が48.6%で、この2つが上位だった。どちらも決まった形の書類で、工程03・04で移す対象になる。

出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(2024年1月)

40.1%
情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の調査(2024年1月・働いている人4,689人・民間の調査)
調査

勤め先で文書や画像を送ったり受けたりするのにFAXを「日常的に使用している」(18.5%)か「たまに使用している」(21.6%)と答えた人の割合。「使用したことはない」は40.9%だった。

出典: 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2023年)【日本】」(新しいタブで開きます)(2024年1月)

起きていること

  • 1日に何枚のFAXが届き、何枚送っているか、数えたことがない
  • どの取引先と、どんな書類をFAXでやり取りしているか、一覧が無い
  • 届いたFAXのうち、迷惑FAXが何割あるか分からない
  • FAXの機械と回線に、1年でいくら払っているか知らない

経営への影響手間と費用が見えないまま、FAXが続く。どの取引先から移せばよいかが決まらず、見直しが始まらない

定石の打ち手

  • なくす書き出した中から、もう要らない送り先と、誰も読んでいない書類を見つけ、送るのをやめる
  • まとめる2週間から1か月の間、届くFAXと送るFAXを、取引先・書類の種類・枚数で1枚の表にまとめる
  • 入れ替える「なんとなく多い」という感覚を、取引先ごとの枚数に替える
  • 仕組みにする表に、取引先ごとの段階(減らす・自動にする/移す/やめる)を書き、工程02〜06の順番を決める

生成AIを入れる場所

  • 手で書いたFAXの記録のメモを、表の形に整える
  • 表から、枚数の多い取引先と書類の種類を拾い出し、移す順番の案を作る
  • FAXの機械と回線の請求書の数字を、1年分の費用にまとめる

どの取引先から移すかは、取引の大きさと相手の事情を知る人が決める。FAXの中身に個人の情報や取引の条件がある時は、AIに入れるのは使ってよいサービスを決めてから。

効果を測る指標
  • コスト1か月に届くFAXと送るFAXの枚数
  • リスクFAXでやり取りしている取引先の数
  • コストFAXの機械と回線にかかる1年の費用
  • 判断の質段階を決めた取引先の割合
工程 02 / 06

迷惑FAXと打ち直しを減らす

自動の読み取り(AI-OCR)

FAXの打ち直しは、事務の人がやってくれています。

取引先がFAXのままでも、届いた後の手間は減らせます。迷惑FAXを減らし、残ったFAXはAI-OCRで読み取って、打ち直しを減らす工程です。取引先が移るのを待たずに、効果が出ます。

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

21.5時間・1か月あたりの削減
中遠外構(建設業、従業員7人)
実績

全部門でFAXを確かめる作業のうち、8割が迷惑FAXで、仕分けに時間がかかっていた。文字の読み取りの仕組み(OCR)とサーバーを入れて、届いたFAXの整理と閲覧のやり方を作り直し、FAXを確かめる作業を1か月あたり21.5時間減らしたとしている。市のデジタル化の支援事業の事例。

出典: 袋井市(静岡県)「令和7年度 袋井市中小企業等デジタル化推進業務 DX事例集」(新しいタブで開きます)(2026年3月)

9割・受注のうちAI-OCRで処理
全国農協食品(食品の製造・卸、菓子類を扱う部署)
実績

取引先からの注文の約9割がFAXで、月2,000件近い受注を5人で打ち直していた。AI-OCRを入れ、受注の9割をAI-OCRで処理するようになった。作業時間は3分の1程度短縮され、残業時間も大幅に減ったとしている。

出典: インフォマート(受発注のサービスを提供する会社)の導入事例(新しいタブで開きます)

起きていること

  • 届くFAXの多くが、頼んでいない広告などの迷惑FAX
  • FAXで届いた注文や書類を、パソコンに打ち直している
  • FAXの文字がつぶれて読めず、電話で聞き直す
  • 打ち直しの間違いで、注文や書類の中身を誤ったことがある

経営への影響事務の時間が、迷惑FAXの仕分けと打ち直しに取られる。打ち間違いが、納品や請求の誤りにつながる

定石の打ち手

  • なくす迷惑FAXの送り元に、送らないよう求める。迷惑FAXを受けない設定や仕組みがあれば使う
  • まとめる紙で受けていたFAXを、パソコンで受けて1か所に集める
  • 入れ替える手での打ち直しを、AI-OCRでの読み取りに替える。読み取った結果は、人が確かめてから使う
  • 仕組みにする取引先に、決まった形の注文書や報告書を使ってもらい、読み取りの間違いを減らす

生成AIを入れる場所

  • AI-OCRで読み取った結果と、元のFAXの食い違いを拾い出す
  • 読み取りやすい注文書の書式の案を作る
  • 迷惑FAXの送り元に、送らないよう求める文書の下書きを作る

読み取った数字や品名が正しいかは、人が確かめる。読み取りの結果を、確かめないまま注文や請求に使わない。

効果を測る指標
  • コストFAXを確かめる作業の時間(1か月あたり)
  • コスト打ち直しにかかる時間
  • リスク打ち間違いの件数
  • 判断の質届くFAXのうち迷惑FAXの割合
工程 03 / 06

注文のやり取りを移す

インターネットでの受発注へ

お客さんがFAXで注文してくるので、こちらからは変えられません。

FAXで届く注文を、データで届く形に移す工程です。卸、飲食、製造など、注文の多い業界ほど効果が出やすくなります。インターネットの画面で注文を出したり受けたりする仕組みを、Web受発注と呼びます。会社どうしで、注文などのデータを決まった形でやり取りする仕組みは、EDI(電子データ交換)と呼びます。在庫や原価まで見直すなら、業務別の資料「受発注・在庫・原価」もあわせて見てください。

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

88%・残業時間の削減
琉球ワークス(土産品の卸、従業員35人)
実績

FAXと電話が中心だった注文の受け付けに、受発注のシステムを入れ、注文の約95%がそのシステム経由になった。残ったFAXやメールの注文はAI-OCRで読み取る。受発注のシステムやAI-OCRなどを段階的に入れた後、残業時間が88%減ったとしている。

出典: 中小機構(中小企業基盤整備機構)の導入事例紹介「ここからアプリ」(新しいタブで開きます)(2026-03-25)

500〜600万円・1年の仕入れ額の削減
沖縄テクノクリエイト(飲食、26店舗)
実績

仕入れ品をFAXで発注し、商品の間違いや発注漏れ、届いたかを電話で確かめる手間があった。受発注プラットフォーム(取引先との注文をインターネット上でまとめて行うサービス)に移し、取引先の大半もこれに応じた。全店の仕入れ品をそろえた結果、1年の仕入れ額が500〜600万円減ったとしている。

出典: インフォマート(受発注のサービスを提供する会社)の導入事例(新しいタブで開きます)

起きていること

  • 取引先からの注文が、FAXで届く
  • FAXで届いた注文を、受注の帳簿やシステムに打ち直している
  • 注文の締め切りの前に、FAXが集中する
  • FAXの見落としや打ち間違いで、納品を誤ったことがある

経営への影響注文を受けるたびに、打ち直しの手間がかかる。見落としや打ち間違いが、取引先の信用を損なう

定石の打ち手

  • なくす注文の後の、確認のためのFAXの送り返しをやめる
  • まとめる注文の多い取引先から順に、注文の形(品名・数・納品日)を1つの書式にまとめる
  • 入れ替えるFAXでの注文を、Web受発注やEDIに替える。替えられない取引先は、工程02のAI-OCRで読み取る
  • 仕組みにする新しい取引先とは、最初からデータで注文を受ける決まりにする

生成AIを入れる場所

  • 取引先に向けた、Web受発注の使い方の説明書の下書きを作る
  • 取引先からの問い合わせに答える文の案を作る
  • 注文の書式の案を、品名や単位の言い方をそろえて作る

どの仕組みを使うか、取引先にどんな条件で移ってもらうかは、人が決める。取引の条件や単価をAIに入れるのは、使ってよいサービスを決めてから。

効果を測る指標
  • スピード注文のうちFAX以外で届く割合
  • コスト注文の打ち直しにかかる時間
  • リスク注文の見落としと打ち間違いの件数
  • コスト注文の処理にかかる残業時間
工程 04 / 06

報告・連絡のやり取りを移す

介護・医療・建設などの書類

相手が役所や病院なので、FAXをやめるのは無理です。

注文のほかに、報告や連絡の書類もFAXで行き来しています。介護の事業所どうしのケアプランや実績の表、病院・薬局・役所との書類、建設の元請けと協力会社の日報や図面。こうした書類を、データでのやり取りに移す工程です。

53.1%

ケアプランデータ連携システムの導入率です。2025年1月末の4.8%から、2026年7月末の53.1%に上がりました(その時点で有効なライセンスから算出)。厚生労働省の資料は、紙でやり取りしていた場合と比べて、作業時間が約3分の1、経費が約2分の1になるという調査研究の試算を示しています。この数字は試算による見込みで、実績ではありません。

出典: 厚生労働省 老健局「ケアプランデータ連携システムの統合と介護情報基盤(介護保険資格確認等WEBサービス)について」(新しいタブで開きます)(令和8年8月)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

トライドマネジメント(居宅介護支援、横浜。ケアマネジャー8人・事務員3人)
取り組み

提供票(介護サービスの予定と実績を、事業所どうしで伝える表)の印刷からFAX・郵送までに約1日かかり、送り間違いにも気を使っていた。2023年4月の本稼働の後、早い段階でケアプランデータ連携システムを使い始め、毎月万単位でかかっていた紙代・印刷費・送信費・郵送費がかなり抑えられ、送り間違いも減ったとしている。一方で、導入している事業所が思ったより少なかったとも述べている。

出典: 国民健康保険中央会 ケアプランデータ連携システム ヘルプデスクサポートサイトのインタビュー(新しいタブで開きます)

起きていること

  • ケアプランや実績の表を、事業所どうしでFAXで送り合っている(介護)
  • 病院・薬局・役所との書類を、FAXでやり取りしている
  • 協力会社との日報や図面を、FAXでやり取りしている(建設)
  • FAXで届いた書類を、紙のまま綴じて保管している

経営への影響同じ書類を、送る前と届いた後に何度も書き写す。紙の書類を探す時間がかかる。送り間違いで、個人の情報が外に出る危険がある

定石の打ち手

  • なくす届いた書類を、紙に印刷して綴じるだけの保管をやめる
  • まとめる相手ごとにばらばらの報告書や連絡票の書式を、1つにまとめる。工程01の表で、業界の仕組みを使える相手を確かめておく
  • 入れ替える業界で決まった仕組みがあれば、それに替える。介護ならケアプランデータ連携システム。業界の仕組みが無い相手とは、共有のフォルダやメールに替える
  • 仕組みにする移した書類は、データのまま保管する場所と名前の付け方を決める

生成AIを入れる場所

  • 相手ごとに、どの仕組みで移せるかを調べた結果を、表にまとめる
  • 相手に移ってもらうための案内の文書の下書きを作る
  • 新しい手順の説明書の下書きを作る

利用者や患者の情報を、AIに入れない。業界の仕組みを使う条件と、国や自治体の補助の条件は、所管する役所の最新の案内で確かめる。

効果を測る指標
  • スピード報告・連絡の書類のうちデータで送る割合
  • コスト書類の書き写しにかかる時間
  • リスク送り間違いとその心配があった件数
  • コスト紙の書類を探す時間
工程 05 / 06

取引先と一緒に切り替える

声のかけ方・二重の作業の期間

取引先に「FAXをやめてくれ」とは、言いにくいです。

FAXは、相手がいるやり取りです。取引先に声をかけ、相手の多くがそろうまでの二重の作業の期間を乗り切る工程です。

63.0%

製造業の受注業務の担当者への調査で、FAXでのやり取りをやめたいと答えた人(208人)のうち、やめられない理由に「取引先がFAXを利用しているため、他のツールに移行できない」を選んだ人の割合です(複数回答)。FAXで書類を受け取っている人(235人)の88.4%が、「FAXでのやり取りをやめたい」と答えていました。AIの読み取りサービスを提供する会社の調査のため、参考値として示します。

出典: AI inside(新しいタブで開きます)(AIの読み取りサービスを提供する会社)のプレスリリース(2024年8月29日。製造業の受注業務の担当者329人への調査)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

4→58%・導入率
鳥取県のモデル事業(介護、モデル地域の八頭町)
実績

鳥取県の令和7年度のモデル事業で、県と先に導入した事業所、支援会社が一緒に、取引のある近くの事業所に声をかけた。八頭町では、ケアプランデータ連携システムの導入率が、実施前の4%から実施後の58%に上がったとしている(北栄町は24%から64%)。

出典: TRAPE(介護事業所の生産性向上を支援する会社。鳥取県のモデル事業を受託)のプレスリリース(新しいタブで開きます)(2026-04-30)

30分・1人1日あたりの短縮
山口油屋福太郎(業務用食品の卸)
実績

受注の4割ほどはWeb受発注などでデータにしていたが、情報が漏れる心配からFAXでの発注を続けたい取引先も一定数いた。月5,500枚のFAXの発注書をAI-OCRで読み取る形にし、1人1日1時間30分かかっていた受注の計上(システムに入れる作業)が30分短くなったとしている。取引先が移らない部分は、工程02に戻って手間を減らした例。

出典: インフォマート(受発注のサービスを提供する会社)の導入事例(新しいタブで開きます)

起きていること

  • FAXをやめたいが、取引先が困ると思い、言い出せない
  • 新しい仕組みを入れたが、使う取引先が少ない
  • データとFAXの両方で受けるため、かえって手間が増えた
  • 取引先が移ってくれない時に、どうするかを決めていない

経営への影響二重の作業が長引き、手間も費用も増える。社内に「入れても無駄だった」という空気が残り、次の見直しが進まない

定石の打ち手

  • なくす取引先ごとに一から説明する手間をやめ、同じ案内の文書を配る
  • まとめる工程01の表で、移ってもらう取引先と時期を、1枚の計画にまとめる。枚数の多い取引先から声をかける
  • 入れ替える「やめてくれ」というお願いを、相手の手間も減るという提案に替える。相手の費用がかからない仕組みを選ぶ
  • 仕組みにする二重の作業の期間を決め、その間の人手を足す。移らない取引先は、工程02のAI-OCRで受け続ける

生成AIを入れる場所

  • 取引先への案内とお願いの文書の下書きを作る
  • 取引先からよく出る質問と、その答えの案を作る
  • 取引先ごとの移り具合の記録を、表にまとめる

どの取引先に、いつ、どんな条件で頼むかは、人が決める。取引先との話し合いは、人が行う。

効果を測る指標
  • スピードデータでのやり取りに移った取引先の割合
  • コスト二重の作業にかかる時間
  • スピード二重の作業の期間の長さ
  • リスク移らないと答えた取引先の数
工程 06 / 06

FAXをやめる

番号の扱い・送り間違いと個人情報

回線が終わるそうなので、その時にFAXもやめればよいと思っています。

相手の多くがそろったら、自社で日を決めて、FAXをやめる工程です。やめるのは、手間と費用と、送り間違いの危険を減らすためです。回線のサービスが終わるのを待つ必要はありません。INSネット(NTTのデジタルの電話回線)は、2028年12月31日に関連サービスの提供をすべて終える予定です。それでも、普通のFAX(G3と呼ぶ種類)は、加入電話などの電話回線で使い続けられます。使えなくなるのは、INSネットのデジタル通信で送る種類のFAX(G4)です。待っていても、FAXは終わりません。なお、INSネットの回線にFAXをつないでいる会社は、回線の切り替えが要ります。

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

千葉労働局 職業対策課(行政機関)
取り組み

イベントの参加申込書や、助成金の審査中の追加の資料をFAXで受けていたが、業務の効率化と個人情報の漏えい防止のため、FAXでの取り扱いをやめ、担当ごとのメールアドレスに替えた。メールが使えない事業所からは、相談を受けるとしている。効果の数字は示されていない。

出典: 千葉労働局 職業対策課「業務・手続におけるFAXの利用廃止について」(新しいタブで開きます)

日本河川協会(公益社団法人)
取り組み

政府が示した、FAXの利用を見直す方針を踏まえ、2025年3月末でFAXの利用を原則やめ、連絡先を担当ごとのメールアドレスに替えた。名刺やメールの署名に載ったFAXの番号には届かなくなることを、前もって知らせた。効果の数字は示されていない。

出典: 日本河川協会「FAX利用廃止のお知らせ」(新しいタブで開きます)(2025年3月)

起きていること

  • FAXをやめる日を、決めていない
  • FAXの番号が、名刺やホームページや見積書に載ったまま
  • 送り先の番号を押し間違えたり、登録を誤ったりする心配がある
  • 個人の情報が載った書類を、FAXで送っている

経営への影響やめる日が決まらないまま、FAXの機械と回線の費用が続く。送り間違いで個人の情報が外に出ると、相手と会社の信用を損なう

定石の打ち手

  • なくすFAXの番号を、名刺・ホームページ・見積書・注文書から外す
  • まとめるまだFAXで送ってくる相手を、最後の一覧にまとめ、1社ずつ移り方を伝える
  • 入れ替える個人の情報が載った書類から先に、FAXをやめてデータでのやり取りに替える
  • 仕組みにするFAXをやめる日を決めて、取引先に前もって知らせる。番号を残す期間と、残すなら誰が何を見るかを決める

生成AIを入れる場所

  • FAXをやめることを知らせる文書の下書きを作る
  • 名刺・ホームページ・書式のうち、FAXの番号が載っている所を一覧にする
  • 取引先からの問い合わせに答える文の案を作る

やめる日と、番号を残すかは、経営者が決める。電話の契約の変更は、契約している通信会社の案内で確かめる。

効果を測る指標
  • コスト1か月に届くFAXの枚数
  • コストFAXの機械と回線にかかる1年の費用
  • リスク個人の情報をFAXで送った件数
  • 判断の質FAXの番号が残っている書式の数

全体像

最初から最後まで、何が変わるか。

6つの工程の「いま」と「改善後」、そして効果を確かめる指標を一覧にします。

  1. 01FAXのやり取りの棚卸し
    いま何を誰とFAXでやり取りしているか、一覧が無い
    改善後取引先・書類・枚数を表にし、取引先ごとの段階を決める。AIがメモを表に整える
    効果を測る指標1か月に届くFAXと送るFAXの枚数/段階を決めた取引先の割合
  2. 02迷惑FAXと打ち直しを減らす
    いま迷惑FAXの仕分けと、打ち直しに時間を取られる
    改善後迷惑FAXを減らし、残ったFAXはAI-OCRで読み取る
    効果を測る指標FAXを確かめる作業の時間(1か月あたり)/打ち間違いの件数
  3. 03注文のやり取りを移す
    いま注文がFAXで届き、打ち直している
    改善後Web受発注やEDIに移す。移らない取引先はAI-OCRで
    効果を測る指標注文のうちFAX以外で届く割合/注文の処理にかかる残業時間
  4. 04報告・連絡のやり取りを移す
    いま報告・連絡の書類を、FAXで送り合っている
    改善後業界の仕組みや共有のフォルダに移し、データのまま保管
    効果を測る指標報告・連絡の書類のうちデータで送る割合/送り間違いとその心配があった件数
  5. 05取引先と一緒に切り替える
    いま取引先に言い出せず、FAXも新しい仕組みも両方ある
    改善後移る順番と二重の作業の期間を決め、案内を配る。AIが案内を下書き
    効果を測る指標データでのやり取りに移った取引先の割合/二重の作業の期間の長さ
  6. 06FAXをやめる
    いまやめる日が決まらず、FAXの番号も費用も残る
    改善後日を決めて知らせ、番号を書式から外し、FAXをやめる
    効果を測る指標FAXの機械と回線にかかる1年の費用/個人の情報をFAXで送った件数

効果は、連鎖して現れる。

何を誰とやり取りしているかが分からないと、減らす所も、移す順番も、やめる日も決まりません。見直しは、工程01から順に進めます。工程02は、取引先が移るのを待たずに効果が出ます。生成AIのルールは、並行して始めて構いません。

  1. 工程01・02で、減らす・自動にする

    FAXの手間と費用が見える。迷惑FAXの仕分けと打ち直しの時間が減る。

  2. 工程03・04で、取引先ごとに移す

    注文と報告・連絡の多くが、データで届く。打ち間違いと送り間違いが減る。

  3. 工程05・06で、取引先と一緒にやめる

    二重の作業の期間が終わる。FAXの機械と回線の費用がなくなる。

効果の測り方

指標は、3層に分けて測る。

経営層に報告するのは一番上の層です。「入れた仕組みの数」や「AIの利用回数」は活動の量であって、成果ではありません。FAXをなくす効果は、枚数と時間で測ります。着手前に数え、数えた時期を書いておきます。

約95%

琉球ワークス(土産品の卸、従業員35人)で、受発注のシステムを入れた後に、そのシステム経由で届くようになった注文の割合です。AI-OCRなども段階的に入れた後、残業時間は88%減ったとしています。注文のうちFAX以外で届く割合を測れば、移り具合が数字で分かります。

出典: 中小機構(中小企業基盤整備機構)の導入事例紹介「ここからアプリ」(新しいタブで開きます)(2026-03-25)

経営成果 ── 経営層に報告
  • 1か月に届くFAXと送るFAXの枚数
  • FAXの機械と回線にかかる1年の費用
  • 注文の処理にかかる残業時間
  • 個人の情報をFAXで送った件数
業務指標 ── 担当が管理
  • FAXを確かめる作業の時間(1か月あたり)
  • 注文のうちFAX以外で届く割合
  • データでのやり取りに移った取引先の割合
  • 二重の作業にかかる時間
活動指標 ── 担当が管理
  • 段階を決めた取引先の割合
  • FAXの番号が残っている書式の数
  • 生成AIのルールを読んだ社員の割合
  • AIの下書きをそのまま使えた割合
着手前に、数える2週間から1か月の間、届くFAXと送るFAXの枚数、迷惑FAXの枚数、打ち直しにかかる時間を数えます。数えた時点が、後で比べる基準になります。
取引先ごとに記録するどの取引先が、いつデータでのやり取りに移ったかを書きます。枚数の多い取引先が移ると、効果が大きく出ます。
二重の作業の手間も測る移った直後は、FAXとデータの両方を受けるため、手間が増えます。増えた時間も記録し、減り始めた時期を確かめます。
AIは、そのまま使えた割合と直す時間で評価する案内の文書や説明書の下書きをそのまま使えた割合と、直すのにかかった時間を測ります。手で作るより遅いなら、使い方を見直します。

進め方

4つの段階で進める。

期間は、社員数十人の会社を想定した目安です。取引先の数と、相手が移る早さで変わります。最初の1か月で、FAXのやり取りを書き出し、迷惑FAXを減らすところまで進めます。

  1. 0〜1か月書き出して、減らす
    • 届くFAXと送るFAXを、取引先・書類・枚数で表にする
    • 迷惑FAXを減らす
    • FAXの機械と回線の1年の費用を確かめる
  2. 1〜3か月自動にして、声をかける
    • 残ったFAXを、AI-OCRで読み取る
    • 枚数の多い取引先から、移ってもらう順番を決める
    • 取引先への案内の文書を作り、声をかける
  3. 3〜12か月移して、やめる
    • 注文と報告・連絡のやり取りを、データに移す
    • 二重の作業の期間に人手を足す
    • 相手の多くがそろったら、FAXをやめる日を決めて知らせる
  4. 最初の月から生成AIのルールを1枚に
    • 使ってよいサービスを決める
    • 入れてよい情報を決める
    • 案内の文書と説明書の下書きから使い始める

生成AIのルールづくりは、ほかの段階を待たずに始めて構いません。取引の条件や個人の情報が、個人の判断でAIに入れられている状態を早く終わらせる方が安全です。

生成AIを仕事に入れる時の決まりごと

最終判断は人が行う取引先への文書、注文や書類の中身に関わるものは、AIが作った後に必ず人が確かめてから使います。
根拠を示させるどの記録・どの書類のどこに基づくかを示させます。根拠を示せない回答は使いません。
入れてよい情報を決める取引の条件や、利用者・患者などの個人の情報を入れる前に、サービスの契約条件(入れた情報をAIの学習に使うか、どこに保存するか)を確かめ、ルールに書きます。
会社の契約で使う社員の個人の契約ではなく、会社が契約したサービスを使います。誰が何に使ったかを会社が把握できます。

経営判断

経営者にしか、決められないこと。

FAXをなくす見直しは、取引先との関係に関わるため、担当者の努力だけでは先に進めなくなる所があります。次の5つは、担当者の権限では決められません。

  1. 取引先に、移ってほしいと頼む大きな取引先には、経営者から頼みます。相手の手間も減ることと、相手に費用がかかるかどうかを、一緒に伝えます。
  2. 二重の作業の期間を、認める移った直後は、手間が増えます。その期間の人手を足し、いつまで続けるかを決めます。
  3. 移らない取引先との線を引く移らない取引先は、AI-OCRで受け続けるのか、いつまでFAXを残すのかを決めます。
  4. 仕組みにかける費用を決めるAI-OCRや受発注の仕組みの費用と、FAXの機械と回線の費用、打ち直しの時間を比べて決めます。国や自治体の補助は、申し込む前に最新の案内で確かめます。
  5. FAXをやめる日を決めるINSネットの提供が終わるのを待つ必要はありません。普通のFAX(G3)は、その後も使い続けられるため、待っていてもFAXは終わりません。手間と費用と送り間違いの危険を比べ、自社で日を決めます。
無料相談

まずは1時間、お話を聞かせてください。

無料で相談する(オンライン1時間) 業務とITの見直し相談のページへ戻る