100万円をかけて FileMaker(データベースを作るソフト)で作ったシステムが、入力されなくなり、使われなくなった。kintone(業務の記録用のアプリを自分たちで作れる、インターネット経由で使うサービス)に切り替えた後、繁忙期の売上が例年の1.5倍になったと公表している。
出典: サイボウズ kintone 導入事例(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-19 閲覧)
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作成: 中川 健太(作家・中川)公開: /更新:
中小企業の経営者のための 顧客管理・顧客対応の見直しと生成AI
お客様の連絡先や、これまでのやりとり。担当者の手帳やスマホ、表計算のファイルに分かれていませんか。担当者が休んだ日に答えられないのは、人の問題ではなく、情報の置き場所の問題です。高いシステムより先に、一か所にまとめる。そこから、問い合わせの受付も、生成AIの使い所も決まります。
この資料の結論
顧客の情報を表計算ソフト(Excel など)か紙の台帳で管理している企業は44.0%、顧客管理の専用システム(CRM)は6.8%です(東京商工会議所の調査。44.0%は37.8%と6.2%を作家・中川が足した数字)。100万円をかけたシステムが使われなくなった例や、入れて3か月で一部を元に戻した例もあります(工程01・02の事例)。まず、今ある顧客の情報を一か所にまとめます。
個人情報保護委員会が直接受け付けた、民間の事業者からの漏えいなどの報告のうち、報告した事業者自身の渡し間違い(誤交付)が45.5%、送り間違い(誤送付)が21.6%でした。事業者自身への不正アクセス(他人が許可なくシステムに入り込むこと)は4.0%です(個人情報保護委員会)。情報を守るための高い製品より先に、送る前に見直す決まりを作ります。
専門の電話窓口(カスタマーセンター)を持たない中小企業の経営者のうち、電話応対の負担を減らす対策を特にしていないと答えた割合は74.4%です(J:COM の調査・民間調査)。まず、誰が受けて誰に回すかを決めます。生成AIを積極的に使っている企業のうち、メール・報告書・議事録の作成や要約に使っていると答えた割合は74.0%です(商工中金の調査)。お客様に直接答えさせるのは、その後です。
症状チェック / 約3分
当てはまる症状が多い工程ほど、見直す余地が大きくなります。当てはまった数が最も多い工程を、最初に見る工程として示します。6つの工程すべてに当てはまった時は、工程01から順に見ることを勧めます。
6つの工程
顧客の情報と問い合わせを一か所に集め、商談から契約後までをつなぎ、守りながら生かす。前の工程で作った一覧が、後の工程の材料になります。
改善の定石
業務改善の定石は、なくす・まとめる・入れ替える・仕組みにする、の順に考えることです(英語の頭文字から ECRS と呼びます)。顧客管理でも順番は同じです。顧客の一覧がばらばらのまま高いシステムを入れても、入力が続かないおそれがあります。
問い合わせの記録や更新日の知らせのように、決まった手順で繰り返す処理は、設定とシステムの方が確実です。生成AIは、お客様のメールや商談のメモのような文章を読み書きする場所で使います。
ITを導入している中小企業のうち、顧客管理の専用システム(CRM)か、営業の進み具合を管理するシステム(SFA)を使っている割合です。自動で質問に答える仕組み(チャットボット)は9.2%でした。冒頭の東京商工会議所の調査(専用システムは6.8%)とは、対象も聞き方も違う調査です。
出典: 中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(新しいタブで開きます)(報告書(2026年3月・有効回答1,668社、うちITを導入している企業 n=915・p.11))
顧客の一覧・名刺・やりとりの記録
お客様のことは、担当者に聞けば分かります。
お客様の名前、連絡先、これまでのやりとり。これが担当者ごとに分かれていると、担当者が休んだ日に誰も答えられません。高いシステムより先に、一か所にまとめる工程です。
顧客の情報をデータベース(検索できる形でまとめた記録)にして、社内で共有している企業の割合です。表計算ソフト(Excel など)か紙の台帳は44.0%(37.8%と6.2%を作家・中川が足した数字)、顧客管理の専用システム(CRM)は6.8%でした。「口頭・電話・帳簿が中心」と答えた17.7%は、この集計の母数に入っていません。
出典: 東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-01-10公表・2024年10〜11月調査・n=1,218、この設問の回答 n=1,002・東京23区の企業が中心・p.8)
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
100万円をかけて FileMaker(データベースを作るソフト)で作ったシステムが、入力されなくなり、使われなくなった。kintone(業務の記録用のアプリを自分たちで作れる、インターネット経由で使うサービス)に切り替えた後、繁忙期の売上が例年の1.5倍になったと公表している。
出典: サイボウズ kintone 導入事例(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-19 閲覧)
名刺管理サービスを入れていない企業で、名刺を受け取る側(仕入れを受け持つ購買・調達の部門)の社員622人に聞いた結果。受け取った名刺を整理できていない割合。
出典: Sansan「名刺交換後の営業・購買活動の実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-05-12)
経営への影響担当者が休む・辞めると、お客様との関係が途切れる。同じお客様に別々の担当者が連絡し、信用を落とす
どの一覧を正しいものとするか、どの項目を残すかは人が決める。顧客の情報をAIに入れるのは、工程06のルールを決めてから。
電話・メール・Webの受付と割り振り
電話が鳴るたびに、誰かの手が止まっています。
電話、メール、Webのフォーム(ホームページの問い合わせ用の入力欄)。入口が増えるほど、誰が受けて誰に回すかがあいまいになります。まず受付と割り振りを決め、返事の漏れをなくす工程です。
専門の電話窓口(カスタマーセンター)を持たない中小企業の経営者のうち、電話応対の負担を減らす対策を特にしていないと答えた割合です。
出典: J:COM「中小企業の電話応対業務に関する調査」(新しいタブで開きます)(2026-03-12公表・2026年2月調査・n=348・民間調査)
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
電話の自動応答サービスを入れ、自動の音声や、携帯電話の番号あてに送る短い文字のメッセージ(SMS)で済む用件は自動で応じ、人が要る電話だけをスタッフが受ける形にした。電話に応じる手間が50%減ったと公表している。
出典: ASCII STARTUP(サービス提供会社の発表資料)(新しいタブで開きます)(2023-12-19)
電話の自動音声案内(IVR、かけてきた人に番号を押してもらい、用件ごとに振り分ける仕組み)と kintone(業務の記録用のアプリを自分たちで作れる、インターネット経由で使うサービス)を組み合わせて入れた。急いで入れたため事前の取り決めが十分でなく、3か月後に一部を元の方法に戻した。
出典: BOXIL(新しいタブで開きます)(2026-07-30)
経営への影響返事の漏れや遅れで、お客様を失う。電話の対応で、本来の仕事が細切れになる
お客様への返事は、人が確かめてから送る。苦情や事故の連絡は、AIの下書きを待たずに責任者へ回す。
見積・提案・受注までの記録
出した見積のうち、どれが決まりそうか、担当者に聞かないと分かりません。
見積を出したお客様が、その後どうなったか。これが担当者の頭の中にしかないと、追いかける時期を逃します。見積から受注までの進み具合を、一覧で見られるようにする工程です。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
kintone(業務の記録用のアプリを自分たちで作れる、インターネット経由で使うサービス)を入れ、見積書1件を作る時間が20分から5分に減った。残業時間は月50時間から15時間に減った(1人あたりか会社全体かは、記事に書かれていない)。
出典: ASCII(新しいタブで開きます)(2026-04-21)
経営への影響追いかける時期を逃して、受注を失う。見積づくりに時間がかかり、残業が増える
見積の金額と値引きは人が決める。単価や数量は、ひな形と台帳の数字で確かめる。AIに計算させない。
更新・点検・手続き・苦情と要望
契約の更新日は、担当者が覚えているはずです。
契約した後も、お付き合いは続きます。更新の時期、点検の案内、住所の変更、解約。手続きが担当者の記憶と紙に頼っていると、連絡の漏れと手間が増えます。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
解約の受付をWebサイトに移し、返信用の封筒に切手を貼って送る作業が減り、切手代などの郵送の費用を年17万円減らした。2021年の記事で、今の費用や仕組みとは異なる場合がある。
出典: ASCII(新しいタブで開きます)(2021-08-06)
経営への影響更新の時期を逃して、契約を失う。郵送や手入力の手間と費用がかかり続ける
苦情への答え方と、お詫びや補償の判断は人が行う。契約の条件は、AIの要約ではなく契約書で確かめる。
送り間違いの防止・漏れた時の報告
うちは小さいので、個人情報の事故とは縁が無いと思っています。
個人情報の事故は、外からの攻撃より「うっかり」の方が多いのが実情です。渡し間違いと送り間違いを減らす決まりを作り、漏れた時に誰がどこへ報告するかを決めておく工程です。
個人情報保護委員会が直接受け付けた、民間の事業者からの漏えいなどの報告(13,345件)のうち、報告した事業者自身の渡し間違い(誤交付)の割合です。事業者自身の送り間違い(誤送付)は21.6%、紛失は4.9%、事業者自身への不正アクセスは4.0%でした。
出典: 個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告」(新しいタブで開きます)(2026年7月公表・令和7年度=2025年度の報告・付表「漏えい等元及び漏えい等原因」)
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
令和7年度(2025年度)に、個人情報保護委員会が処理した、民間の事業者からの個人情報の漏えいなどの報告の件数(他の省庁を経由したものを含む)。前年度は19,056件だった。
出典: 個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告」(新しいタブで開きます)(2026年7月)
経営への影響お客様の信用を失う。国への報告や、お客様へのお詫びの対応に追われる
報告が必要かどうかの判断と、国やお客様への報告は人が行う。期限があるので、迷ったら専門家に相談する。個人情報保護法の改正法は2026年7月17日に公布され、施行は原則として公布から2年以内とされている。決まりは、取り組む時点の最新の法令とガイドラインで確かめる。
下書きと要約から始める
生成AIで、お客様の問い合わせに自動で答えられると聞きました。
生成AIは、お客様に直接答えさせる前に、人が書く文章の下書きと要約から使い始めます。顧客の情報を入れる前に、入れてよい情報と使うサービスを決めておく工程です。
生成AIを積極的に使っている企業(会社で導入しているか、社員の利用を勧めている企業。回答企業の約3割)のうち、メール・報告書・議事録の作成や要約に使っていると答えた割合です。現場の作業や、お客様と直接やりとりする仕事(対人業務)の支援・自動化は9.5%でした。
出典: 商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(新しいタブで開きます)(2026-03-31公表・2026年1月調査・有効回答3,892社、この設問は生成AIを積極的に使っている企業が対象・p.6)
経営への影響顧客の情報の流出。間違った答えがお客様に届き、信用を落とす
お客様に何を約束するか、値引きやお詫びの判断は人が行う。AIの下書きは、人が確かめてから送る。
全体像
6つの工程の「いま」と「改善後」、そして効果を確かめる指標を一覧にします。
問い合わせの受付も、見積の追いかけも、顧客の一覧が無いと始まりません。見直しは、顧客情報をまとめる工程から順に進めます。個人情報の扱いと生成AIのルールは、並行して始めて構いません。
担当者が休んでも、お客様のことが分かる。返事の漏れが見える。
見積の追いかけと、更新の時期を逃さなくなる。
送る前の見直しと生成AIのルールがそろい、下書きと要約に安心して使える。
効果の測り方
経営層に報告するのは一番上の層です。「入れたシステムの数」や「AIの利用回数」は活動の量であって、成果ではありません。
デジタル化を進める時の課題を聞いた設問(複数回答)で、最も多かったのは「コストが負担できない」の31.9%でした。費用に見合う効果があるかは、着手前と後の数字で確かめます。
出典: 東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-01-10公表・2024年10〜11月調査・n=1,218・東京23区の企業が中心・複数回答・p.11)
進め方
期間は、社員数十人の会社を想定した目安です。最初の1か月で、顧客の一覧を1つに決めるところまで進めます。
生成AIのルールづくりは、他の段階を待たずに始めて構いません。顧客の情報が個人の判断でAIに入れられている状態を、早く終わらせる方が安全です。
経営判断
顧客管理の見直しは、担当者の努力だけでは先に進めなくなる所があります。次の5つは、担当者の権限では決められません。