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作成: 中川 健太(作家・中川)公開: /更新:

中小企業の経営者のための 顧客管理・顧客対応の見直しと生成AI

お客様の情報、担当者が休んでも分かりますか。

お客様の連絡先や、これまでのやりとり。担当者の手帳やスマホ、表計算のファイルに分かれていませんか。担当者が休んだ日に答えられないのは、人の問題ではなく、情報の置き場所の問題です。高いシステムより先に、一か所にまとめる。そこから、問い合わせの受付も、生成AIの使い所も決まります。

顧客の情報を、何で管理しているか
表計算ソフト(Excel など)か紙の台帳44.0%
顧客管理の専用システム(CRM)6.8%
44.0%は、表計算ソフト(Excel など)の37.8%と紙の台帳の6.2%を、作家・中川が足した数字です。顧客の情報をデータベース(検索できる形でまとめた記録)にして、社内で共有しているのは47.2%でした。「口頭・電話・帳簿が中心」と答えた17.7%は、この集計の母数に入っていません。東京23区の企業が中心の調査です。出典: 東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-01-10公表・2024年10〜11月調査・n=1,218、この設問の回答 n=1,002・東京23区の企業が中心・p.8)

この資料の結論

見直しの要点は、3つです。

高いシステムより先に、一か所にまとめる

顧客の情報を表計算ソフト(Excel など)か紙の台帳で管理している企業は44.0%、顧客管理の専用システム(CRM)は6.8%です(東京商工会議所の調査。44.0%は37.8%と6.2%を作家・中川が足した数字)。100万円をかけたシステムが使われなくなった例や、入れて3か月で一部を元に戻した例もあります(工程01・02の事例)。まず、今ある顧客の情報を一か所にまとめます。

個人情報の事故の多くは「うっかり」

個人情報保護委員会が直接受け付けた、民間の事業者からの漏えいなどの報告のうち、報告した事業者自身の渡し間違い(誤交付)が45.5%、送り間違い(誤送付)が21.6%でした。事業者自身への不正アクセス(他人が許可なくシステムに入り込むこと)は4.0%です(個人情報保護委員会)。情報を守るための高い製品より先に、送る前に見直す決まりを作ります。

問い合わせは、まず受付と割り振り。生成AIは下書きと要約から

専門の電話窓口(カスタマーセンター)を持たない中小企業の経営者のうち、電話応対の負担を減らす対策を特にしていないと答えた割合は74.4%です(J:COM の調査・民間調査)。まず、誰が受けて誰に回すかを決めます。生成AIを積極的に使っている企業のうち、メール・報告書・議事録の作成や要約に使っていると答えた割合は74.0%です(商工中金の調査)。お客様に直接答えさせるのは、その後です。

症状チェック / 約3分

自社に当てはまるものを、選んでください。

当てはまる症状が多い工程ほど、見直す余地が大きくなります。当てはまった数が最も多い工程を、最初に見る工程として示します。6つの工程すべてに当てはまった時は、工程01から順に見ることを勧めます。

6つの工程

顧客管理・顧客対応を、6つの工程で見る。

顧客の情報と問い合わせを一か所に集め、商談から契約後までをつなぎ、守りながら生かす。前の工程で作った一覧が、後の工程の材料になります。

改善の定石

まず「なくす」「まとめる」。AIは最後。

業務改善の定石は、なくす・まとめる・入れ替える・仕組みにする、の順に考えることです(英語の頭文字から ECRS と呼びます)。顧客管理でも順番は同じです。顧客の一覧がばらばらのまま高いシステムを入れても、入力が続かないおそれがあります。

  1. ELIMINATEなくす個人の手帳にしかない情報、重なった顧客の一覧、聞くためだけの報告は、本当に要るか。
  2. COMBINEまとめる顧客・問い合わせ・見積・契約の記録を、一つの場所に。
  3. REARRANGE入れ替える紙と郵送の手続きを、Webへ。手が空いた人が受ける電話を、決まった受付へ。
  4. SIMPLIFY仕組みにする入力する項目、回す先、更新日の知らせを、決まりと設定で。
  5. + GENERATIVE AI生成AI残った「人が文章を読み、書く」部分を支える。

何でもAIに任せない。AIが向くのは真ん中だけ。

問い合わせの記録や更新日の知らせのように、決まった手順で繰り返す処理は、設定とシステムの方が確実です。生成AIは、お客様のメールや商談のメモのような文章を読み書きする場所で使います。

8.2%

ITを導入している中小企業のうち、顧客管理の専用システム(CRM)か、営業の進み具合を管理するシステム(SFA)を使っている割合です。自動で質問に答える仕組み(チャットボット)は9.2%でした。冒頭の東京商工会議所の調査(専用システムは6.8%)とは、対象も聞き方も違う調査です。

出典: 中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(新しいタブで開きます)(報告書(2026年3月・有効回答1,668社、うちITを導入している企業 n=915・p.11))

決まった手順で繰り返すシステム
  • 顧客の一覧と検索
  • 問い合わせの受付の記録
  • 電話の用件ごとの振り分け
  • 更新日の前の知らせ
文章を読み、案を作る生成AI
  • お客様へのメールの返事の下書き
  • 電話や商談のメモの要約
  • 問い合わせの用件の仕分けの案
  • 苦情や要望の傾向のまとめ
責任を伴う人
  • 見積の金額と値引きの判断
  • 苦情への答え方とお詫び
  • 個人情報の事故の報告の判断
  • AIが作った文章の確認と差し戻し
工程 01 / 06

顧客情報をまとめる

顧客の一覧・名刺・やりとりの記録

お客様のことは、担当者に聞けば分かります。

お客様の名前、連絡先、これまでのやりとり。これが担当者ごとに分かれていると、担当者が休んだ日に誰も答えられません。高いシステムより先に、一か所にまとめる工程です。

47.2%

顧客の情報をデータベース(検索できる形でまとめた記録)にして、社内で共有している企業の割合です。表計算ソフト(Excel など)か紙の台帳は44.0%(37.8%と6.2%を作家・中川が足した数字)、顧客管理の専用システム(CRM)は6.8%でした。「口頭・電話・帳簿が中心」と答えた17.7%は、この集計の母数に入っていません。

出典: 東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-01-10公表・2024年10〜11月調査・n=1,218、この設問の回答 n=1,002・東京23区の企業が中心・p.8)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

1.5倍
京屋染物店(染物の製造、従業員16人)
実績

100万円をかけて FileMaker(データベースを作るソフト)で作ったシステムが、入力されなくなり、使われなくなった。kintone(業務の記録用のアプリを自分たちで作れる、インターネット経由で使うサービス)に切り替えた後、繁忙期の売上が例年の1.5倍になったと公表している。

出典: サイボウズ kintone 導入事例(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-19 閲覧)

起きていること

  • 顧客の連絡先や過去のやりとりが、担当者の手帳・スマホ・メールに分かれている
  • 表計算のファイルが部署や担当者ごとにあり、どれが最新か分からない
  • もらった名刺が、整理されないまま机にたまっている
  • システムを入れたが、入力されずに使われなくなった

経営への影響担当者が休む・辞めると、お客様との関係が途切れる。同じお客様に別々の担当者が連絡し、信用を落とす

定石の打ち手

  • まとめる顧客の一覧を1つに決める。名前・連絡先・担当者・最後に連絡した日を書く
  • なくす個人の手帳やファイルにしかない情報をなくし、一覧に移す
  • 入れ替えるいきなり高いシステムを入れず、今ある表計算のファイルを1つにまとめるところから始める
  • 仕組みにする入力する項目と、誰がいつ入れるかを決める。名刺は、もらった週のうちに一覧に入れる

生成AIを入れる場所

  • ばらばらの表計算のファイルを読み、重なっているお客様や書き方の違いを洗い出す
  • 名刺の画像やメールの署名から、一覧に入れる項目の下書きを作る
  • 担当者のメモから、お客様ごとのやりとりの要約を作る

どの一覧を正しいものとするか、どの項目を残すかは人が決める。顧客の情報をAIに入れるのは、工程06のルールを決めてから。

効果を測る指標
  • リスク担当者しか分からない顧客の数
  • スピード担当者が不在でも答えられた問い合わせの割合
  • コスト顧客の情報を探す時間
  • 判断の質最後に連絡した日が分かる顧客の割合
工程 02 / 06

問い合わせの窓口

電話・メール・Webの受付と割り振り

電話が鳴るたびに、誰かの手が止まっています。

電話、メール、Webのフォーム(ホームページの問い合わせ用の入力欄)。入口が増えるほど、誰が受けて誰に回すかがあいまいになります。まず受付と割り振りを決め、返事の漏れをなくす工程です。

74.4%

専門の電話窓口(カスタマーセンター)を持たない中小企業の経営者のうち、電話応対の負担を減らす対策を特にしていないと答えた割合です。

出典: J:COM「中小企業の電話応対業務に関する調査」(新しいタブで開きます)(2026-03-12公表・2026年2月調査・n=348・民間調査)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

50%削減
稲取東海ホテル湯苑(旅館)
実績

電話の自動応答サービスを入れ、自動の音声や、携帯電話の番号あてに送る短い文字のメッセージ(SMS)で済む用件は自動で応じ、人が要る電話だけをスタッフが受ける形にした。電話に応じる手間が50%減ったと公表している。

出典: ASCII STARTUP(サービス提供会社の発表資料)(新しいタブで開きます)(2023-12-19)

不動産/建設/設備・101〜200人
匿名事例

電話の自動音声案内(IVR、かけてきた人に番号を押してもらい、用件ごとに振り分ける仕組み)と kintone(業務の記録用のアプリを自分たちで作れる、インターネット経由で使うサービス)を組み合わせて入れた。急いで入れたため事前の取り決めが十分でなく、3か月後に一部を元の方法に戻した。

出典: BOXIL(新しいタブで開きます)(2026-07-30)

起きていること

  • 電話やメールを、手が空いている人がその場で受けている
  • 受けた問い合わせを誰に回したか、記録が残らない
  • 返事をしたかどうか、担当者に聞かないと分からない
  • 同じ質問に、毎回一から答えている

経営への影響返事の漏れや遅れで、お客様を失う。電話の対応で、本来の仕事が細切れになる

定石の打ち手

  • まとめる電話・メール・Webのフォームの問い合わせを、1つの受付の記録にまとめる
  • 仕組みにする用件ごとに回す先を決める。返事をしたら、記録に印をつける
  • 入れ替えるよくある質問は、Webサイトの「よくある質問」のページで答える
  • 仕組みにする電話の自動音声案内(IVR、かけてきた人に番号を押してもらい、用件ごとに振り分ける仕組み)を使う。入れるのは、受付と回す先が決まってから

生成AIを入れる場所

  • 問い合わせのメールを読み、用件を分けて、回す先の案を示す
  • よくある質問への回答の下書きを作る
  • 電話のメモから、受付の記録に残す要約を作る

お客様への返事は、人が確かめてから送る。苦情や事故の連絡は、AIの下書きを待たずに責任者へ回す。

効果を測る指標
  • スピード最初の返事までの時間
  • リスク返事をしていない問い合わせの数
  • コスト電話の対応にかかる時間
  • 判断の質最初に受けた人で解決した割合
工程 03 / 06

見積・商談の進み具合

見積・提案・受注までの記録

出した見積のうち、どれが決まりそうか、担当者に聞かないと分かりません。

見積を出したお客様が、その後どうなったか。これが担当者の頭の中にしかないと、追いかける時期を逃します。見積から受注までの進み具合を、一覧で見られるようにする工程です。

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

20→5分/件
松永興業(住宅設備の工事、従業員35人)
実績

kintone(業務の記録用のアプリを自分たちで作れる、インターネット経由で使うサービス)を入れ、見積書1件を作る時間が20分から5分に減った。残業時間は月50時間から15時間に減った(1人あたりか会社全体かは、記事に書かれていない)。

出典: ASCII(新しいタブで開きます)(2026-04-21)

起きていること

  • 出した見積の一覧が無く、その後の連絡が担当者任せになっている
  • 見積を作るたびに、過去の書類や単価を探している
  • 商談の進み具合が、会議での口頭の報告だけになっている
  • 断られた理由が残らず、次の提案に生かせない

経営への影響追いかける時期を逃して、受注を失う。見積づくりに時間がかかり、残業が増える

定石の打ち手

  • まとめる見積の一覧を、顧客の一覧とつなげる。出した日・金額・次に連絡する日を書く
  • 仕組みにするよく使う品目と単価をひな形にし、見積を組み合わせで作る
  • なくす進み具合を聞くためだけの会議や報告をなくし、一覧を見れば分かるようにする
  • 仕組みにする決まった理由と断られた理由を、一言でよいので記録する

生成AIを入れる場所

  • お客様とのメールや打ち合わせのメモから、提案書や見積の送り状の下書きを作る
  • 商談のメモを要約し、次にやることを並べる
  • 断られた理由の記録を読み、多い理由をまとめる

見積の金額と値引きは人が決める。単価や数量は、ひな形と台帳の数字で確かめる。AIに計算させない。

効果を測る指標
  • コスト見積1件にかかる時間
  • スピード問い合わせから見積を出すまでの日数
  • 判断の質次に連絡する日が決まっている見積の割合
  • 判断の質出した見積のうち受注した割合
工程 04 / 06

契約後のお付き合い

更新・点検・手続き・苦情と要望

契約の更新日は、担当者が覚えているはずです。

契約した後も、お付き合いは続きます。更新の時期、点検の案内、住所の変更、解約。手続きが担当者の記憶と紙に頼っていると、連絡の漏れと手間が増えます。

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

17万円/年
日本エイジェント(不動産、従業員149人)
実績

解約の受付をWebサイトに移し、返信用の封筒に切手を貼って送る作業が減り、切手代などの郵送の費用を年17万円減らした。2021年の記事で、今の費用や仕組みとは異なる場合がある。

出典: ASCII(新しいタブで開きます)(2021-08-06)

起きていること

  • 契約の更新日や点検の時期を、担当者の記憶に頼っている
  • 住所変更や解約の手続きを、紙と郵送でやっている
  • 契約したお客様に、その後連絡していない
  • 苦情や要望が、受けた人のところで止まっている

経営への影響更新の時期を逃して、契約を失う。郵送や手入力の手間と費用がかかり続ける

定石の打ち手

  • まとめる契約の一覧を顧客の一覧とつなげ、更新日と次に連絡する日を書く
  • 仕組みにする更新日の前に、担当者に知らせが届くようにする
  • 入れ替える住所変更や解約の受付を、紙と郵送からWebのフォームに切り替える
  • 仕組みにする苦情や要望を記録に残し、月に1回まとめて見る

生成AIを入れる場所

  • 更新の案内や点検のお知らせの文面を、お客様ごとに下書きする
  • 苦情や要望の記録を読み、多い内容をまとめる
  • お客様からの手紙やメールを要約し、記録に残す

苦情への答え方と、お詫びや補償の判断は人が行う。契約の条件は、AIの要約ではなく契約書で確かめる。

効果を測る指標
  • 判断の質契約を更新したお客様の割合
  • リスク更新日を過ぎてから気づいた件数
  • コスト手続き1件にかかる時間と郵送の費用
  • スピード苦情を受けてから最初に返事をするまでの時間
工程 05 / 06

個人情報の扱い

送り間違いの防止・漏れた時の報告

うちは小さいので、個人情報の事故とは縁が無いと思っています。

個人情報の事故は、外からの攻撃より「うっかり」の方が多いのが実情です。渡し間違いと送り間違いを減らす決まりを作り、漏れた時に誰がどこへ報告するかを決めておく工程です。

45.5%

個人情報保護委員会が直接受け付けた、民間の事業者からの漏えいなどの報告(13,345件)のうち、報告した事業者自身の渡し間違い(誤交付)の割合です。事業者自身の送り間違い(誤送付)は21.6%、紛失は4.9%、事業者自身への不正アクセスは4.0%でした。

出典: 個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告」(新しいタブで開きます)(2026年7月公表・令和7年度=2025年度の報告・付表「漏えい等元及び漏えい等原因」)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

起きていること

  • メールやFAXを送る前に、宛先を見直す決まりが無い
  • 複数のお客様に一度にメールを送る時、宛先が互いに見える形で送っている
  • 顧客の一覧を、誰でも持ち出せる場所に置いている
  • 情報が漏れた時に、誰がどこへ報告するかを知らない

経営への影響お客様の信用を失う。国への報告や、お客様へのお詫びの対応に追われる

定石の打ち手

  • 仕組みにする送る前に、宛先と添付ファイルを見直す。大事な書類は二人で確かめてから渡す
  • 入れ替える複数のお客様に送るメールは、宛先が互いに見えない送り方(BCC)か、一斉に送る仕組みに切り替える
  • なくす要らなくなった顧客の情報と、個人のパソコンに残っている顧客の一覧を消す
  • 仕組みにする漏れた、または漏れたおそれがある時の報告の手順を1枚にまとめる。国への報告が必要なのは、次の4つの場合。要配慮個人情報(病歴など、特に慎重に扱う情報)が含まれる場合。不正に使われるとお金の被害が出るおそれがある場合。不正アクセスなど、不正な目的によるおそれがある場合。漏れた(おそれがある)人数が1,000人を超える場合。報告先は個人情報保護委員会。速報(最初の報告)は「速やかに」出す(目安は、事態を知った時点からおおむね3〜5日以内)。確報(全ての事項をそろえた報告)は、事態を知った日から30日以内に出す(不正な目的によるおそれがある場合は60日以内)

生成AIを入れる場所

  • 個人情報保護委員会のガイドライン(法律の読み方と守り方を示した指針)をもとに、社内の扱いの決まりの下書きを作る
  • 漏れた時の報告の手順を、社員が読める1枚の文章に整える
  • ガイドラインの改正のお知らせを要約し、自社に関係する点を並べる

報告が必要かどうかの判断と、国やお客様への報告は人が行う。期限があるので、迷ったら専門家に相談する。個人情報保護法の改正法は2026年7月17日に公布され、施行は原則として公布から2年以内とされている。決まりは、取り組む時点の最新の法令とガイドラインで確かめる。

効果を測る指標
  • リスク送り間違い・渡し間違いの件数
  • リスク送る前の見直しをした割合
  • リスク個人のパソコンに残っている顧客の一覧の数
  • スピード事故に気づいてから責任者に伝わるまでの時間
工程 06 / 06

生成AIの使い所

下書きと要約から始める

生成AIで、お客様の問い合わせに自動で答えられると聞きました。

生成AIは、お客様に直接答えさせる前に、人が書く文章の下書きと要約から使い始めます。顧客の情報を入れる前に、入れてよい情報と使うサービスを決めておく工程です。

74.0%

生成AIを積極的に使っている企業(会社で導入しているか、社員の利用を勧めている企業。回答企業の約3割)のうち、メール・報告書・議事録の作成や要約に使っていると答えた割合です。現場の作業や、お客様と直接やりとりする仕事(対人業務)の支援・自動化は9.5%でした。

出典: 商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(新しいタブで開きます)(2026-03-31公表・2026年1月調査・有効回答3,892社、この設問は生成AIを積極的に使っている企業が対象・p.6)

起きていること

  • 使うかどうかが、社員それぞれの判断に任されている
  • 無料の生成AIに、お客様の名前や相談の中身が入力されているかもしれない
  • AIの答えを確かめないまま、お客様に送っている
  • いきなりお客様に自動で答えさせようとして、間違った答えが心配で止まっている

経営への影響顧客の情報の流出。間違った答えがお客様に届き、信用を落とす

定石の打ち手

  • 入れ替えるお客様に直接答えさせる前に、社内の下書きと要約から使い始める
  • まとめる入れてよい顧客の情報と、入れてはいけない情報を、1枚のルールにまとめる
  • 仕組みにする会社の契約で使うサービスを決め、入力した情報がAIの学習(性能を上げるための材料)に使われない設定かを確かめる
  • 仕組みにするお客様に出す文章は、人が確かめてから送ると決める

生成AIを入れる場所

  • お客様へのメールの返事の下書きを作る
  • 打ち合わせや電話のメモから、議事録と次にやることを作る
  • 社内の資料をもとに、よくある質問と回答の案を作る

お客様に何を約束するか、値引きやお詫びの判断は人が行う。AIの下書きは、人が確かめてから送る。

効果を測る指標
  • コストメールや議事録の作成にかかる時間
  • 判断の質AIの下書きをそのまま使えた割合
  • リスクルールを読んだ社員の割合
  • リスク会社の契約で使っている人の割合

全体像

最初から最後まで、何が変わるか。

6つの工程の「いま」と「改善後」、そして効果を確かめる指標を一覧にします。

  1. 01顧客情報をまとめる
    いま顧客の情報が、担当者の手帳やファイルに分かれている
    改善後顧客の一覧を1つに。AIが重なりを洗い出し、メモを要約
    効果を測る指標担当者しか分からない顧客の数/担当者が不在でも答えられた問い合わせの割合
  2. 02問い合わせの窓口
    いま手が空いた人が電話を受け、返事の漏れが分からない
    改善後受付の記録と回す先の決まり。AIが返事を下書き
    効果を測る指標最初の返事までの時間/返事をしていない問い合わせの数
  3. 03見積・商談の進み具合
    いま出した見積のその後が、担当者の頭の中にある
    改善後見積の一覧とひな形。AIが提案書と商談の要約を下書き
    効果を測る指標見積1件にかかる時間/次に連絡する日が決まっている見積の割合
  4. 04契約後のお付き合い
    いま更新日は担当者の記憶頼み。手続きは紙と郵送
    改善後契約の一覧と更新前の知らせ。手続きはWebのフォームへ
    効果を測る指標契約を更新したお客様の割合/手続き1件にかかる時間と郵送の費用
  5. 05個人情報の扱い
    いま送る前の見直しの決まりが無い。報告の手順を知らない
    改善後送る前の見直しと、漏れた時の報告の手順を1枚に
    効果を測る指標送り間違い・渡し間違いの件数/事故に気づいてから責任者に伝わるまでの時間
  6. 06生成AIの使い所
    いま使うかどうかが個人任せ。AIの答えをそのまま送る
    改善後1枚のルールと会社の契約。下書きと要約から使う
    効果を測る指標AIの下書きをそのまま使えた割合/メールや議事録の作成にかかる時間

効果は、連鎖して現れる。

問い合わせの受付も、見積の追いかけも、顧客の一覧が無いと始まりません。見直しは、顧客情報をまとめる工程から順に進めます。個人情報の扱いと生成AIのルールは、並行して始めて構いません。

  1. 工程01・02で、顧客の情報と問い合わせを一か所に集める

    担当者が休んでも、お客様のことが分かる。返事の漏れが見える。

  2. 工程03・04で、商談から契約後までをつなぐ

    見積の追いかけと、更新の時期を逃さなくなる。

  3. 工程05・06で、守りながら生かす

    送る前の見直しと生成AIのルールがそろい、下書きと要約に安心して使える。

効果の測り方

指標は、3層に分けて測る。

経営層に報告するのは一番上の層です。「入れたシステムの数」や「AIの利用回数」は活動の量であって、成果ではありません。

31.9%

デジタル化を進める時の課題を聞いた設問(複数回答)で、最も多かったのは「コストが負担できない」の31.9%でした。費用に見合う効果があるかは、着手前と後の数字で確かめます。

出典: 東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-01-10公表・2024年10〜11月調査・n=1,218・東京23区の企業が中心・複数回答・p.11)

経営成果 ── 経営層に報告
  • 契約を更新したお客様の割合
  • 出した見積のうち受注した割合
  • 個人情報の事故の件数
  • 問い合わせと手続きにかかる時間の合計
業務指標 ── 担当が管理
  • 最初の返事までの時間
  • 返事をしていない問い合わせの数
  • 見積1件にかかる時間
  • 送り間違い・渡し間違いの件数
活動指標 ── 担当が管理
  • 一覧に載っている顧客の割合
  • 次に連絡する日が決まっている見積の割合
  • 生成AIのルールを読んだ社員の割合
  • AIの下書きをそのまま使えた割合
着手前に、数える顧客の一覧がいくつあるか、1週間の問い合わせの件数、出している見積の件数。数えた時点が、後で比べる基準になります。
問い合わせは、1週間記録をつける電話・メール・Webのフォームごとに、件数と最初の返事までの時間を書きます。どこに手間がかかっているかが見えます。
お金の効果は、時間と費用の差で示す見積や手続きにかかる時間と、郵送の費用を、着手前と後で比べます。
AIは、そのまま使えた割合と直す時間で評価するAIの下書きをそのまま使えた割合と、直すのにかかった時間を測ります。手で作るより遅いなら、使い方を見直します。

進め方

4つの段階で進める。

期間は、社員数十人の会社を想定した目安です。最初の1か月で、顧客の一覧を1つに決めるところまで進めます。

  1. 0〜1か月まとめる
    • 顧客の一覧を1つに決める
    • 名刺と個人のファイルの情報を一覧に移す
    • 問い合わせを1週間記録して数える
  2. 1〜3か月受付と割り振り
    • 問い合わせの受付の記録と回す先を決める
    • よくある質問を書き出す
    • 送る前の見直しと、漏れた時の報告の手順を1枚に
  3. 2〜6か月商談と契約後をつなぐ
    • 見積の一覧とひな形を作る
    • 契約の一覧と更新前の知らせ
    • 紙と郵送の手続きをWebへ
  4. 最初の月から生成AIのルールを1枚に
    • 使ってよいサービスを決める
    • 入れてよい顧客の情報を決める
    • メールの下書きと議事録から使い始める

生成AIのルールづくりは、他の段階を待たずに始めて構いません。顧客の情報が個人の判断でAIに入れられている状態を、早く終わらせる方が安全です。

生成AIを仕事に入れる時の決まりごと

最終判断は人が行うお客様に出す文章、見積の金額、苦情への答えに関わるものは、AIが作った後に必ず人が確かめてから使います。
根拠を示させるどの記録・どの資料のどこに基づくかを示させます。根拠を示せない回答は使いません。
入れてよい情報を決める顧客の情報を扱う前に、サービスの契約条件(学習への利用、保存場所)を確かめ、ルールに書きます。
会社の契約で使う社員の個人の契約ではなく、会社が契約したサービスを使います。誰が何に使ったかを会社が把握できます。

経営判断

経営者にしか、決められないこと。

顧客管理の見直しは、担当者の努力だけでは先に進めなくなる所があります。次の5つは、担当者の権限では決められません。

  1. 顧客の情報は会社のものと決める顧客の情報は、担当者の手帳やスマホではなく、会社の一覧に入れると決めて伝えます。
  2. どの一覧を正しいものとするか決めるばらばらの一覧のどれを残すか、決める人が要ります。部署ごとの反対があっても決めます。
  3. システムは、まとめてから選ぶ高いシステムは、顧客の一覧をまとめ、使い方が決まってから選びます。先に買うと、入力されずに終わるおそれがあります。
  4. 個人情報の事故の時に、誰が何をするかを決める国への報告、お客様へのお詫び、専門家への相談。報告には期限があります。決めるのは経営者です。
  5. 生成AIのルールを決めて伝える入れてよい顧客の情報と使ってよいサービスは、経営者が決めて全社に伝えます。
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