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作成: 中川 健太(作家・中川)公開: /更新:

中小企業の経営者のための 社内ITの見直しと生成AI

会社のパソコンとアカウント、誰が見ていますか。

中小企業で、ITの専任の担当者がいないのは珍しいことではありません。困るのは専任がいないことではなく、誰が見るかが決まっていないことです。パソコン、アカウント(メールやサービスに入るためのIDとパスワード)、契約しているサービス、生成AI。見る人と一覧があれば、守りも費用の見直しも始められます。

情報セキュリティの対策を、会社として決めず社員任せにしている中小企業の割合
中小企業全体69.7%
小規模企業者84.5%
専門の部署や担当者を置かず、兼任の担当者も任命せず、社員それぞれの対応に任せている企業の割合です。出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」(新しいタブで開きます)(2025年5月・2024年10〜11月調査・全体 n=4,191、小規模企業者 n=2,775・報告書 図3-121)

この資料の結論

見直しの要点は、3つです。

専任がいないのが普通。まず「誰が見るか」と一覧から

専任の担当者を雇う前に、兼任でも見る人を決めます。機器・アカウント・契約の3つの一覧(台帳)があれば、次にやることが見えます。情報セキュリティ専門の部署や担当者がいる中小企業は、9.3%です(情報処理推進機構=IPA の調査)。

高い製品より、基本の穴をふさぐ

不正アクセスの被害のうち、更新していないソフトや機器の弱点を突かれたものが48.0%、IDとパスワードをだまし取られたものが36.8%でした(IPA)。まず、ソフトの更新、二段階認証(パスワードに加えて、スマホなどでも本人を確かめる設定)、バックアップ(データの控え)を固めます。

生成AIは、禁止より1枚のルールを作ってから

禁止しても、個人の判断で使われます。使ってよいサービスと入れてよい情報を1枚に決めてから、会社の道具として使います。

症状チェック / 約3分

自社に当てはまるものを、選んでください。

当てはまる症状が多い工程ほど、見直す余地が大きくなります。当てはまった数が最も多い工程を、最初に見る工程として示します。6つの工程すべてに当てはまった時は、工程01から順に見ることを勧めます。

6つの工程

社内のITを、6つの工程で見る。

持っているものを把握し、穴と無駄を減らし、続く形にする。前の工程で作った一覧が、後の工程の材料になります。

改善の定石

まず「なくす」。AIは最後。

業務改善の定石は、なくす・まとめる・入れ替える・仕組みにする、の順に考えることです(英語の頭文字から ECRS と呼びます)。社内のITでも順番は同じです。使っていないサービスや古い機器を残したまま守りを固めても、守るものが多いままです。

  1. ELIMINATEなくす使っていないサービス・アカウント・古い機器は、本当に要るか。
  2. COMBINEまとめる機器の台帳・アカウント一覧・契約一覧を、一つの場所に。
  3. REARRANGE入れ替える壊れてから買うを、計画的な入れ替えへ。詳しい社員頼みを、社外の相談先へ。
  4. SIMPLIFY仕組みにする更新・バックアップ・入社退職の作業を、設定と手順で自動に。
  5. + GENERATIVE AI生成AI残った「人が文書を読んで判断する」部分を支える。

何でもAIに任せない。AIが向くのは真ん中だけ。

更新やバックアップのように、決まった手順で繰り返す処理は、設定とシステムの方が確実です。生成AIは、規約や見積のような文書を読む場所で使います。

20.4%

AIを導入している中小企業の割合です。導入している企業のうち82.6%が生成AIを使っています。一方で、成功事例や活用事例の情報が不足していると答えた企業は83.3%にのぼります。

出典: 中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(新しいタブで開きます)(2026年3月・有効回答1,668社)

決まった手順で繰り返すシステム
  • ソフトとOS(Windows などの基本ソフト)の自動更新
  • バックアップの取得
  • 二段階認証などのログインの制御
  • 利用料の集計
文書を読み、案を作る生成AI
  • 利用規約・更新のお知らせ・見積の読み取り
  • 台帳と手順書の下書き
  • ルールを根拠にした社内の問い合わせ回答
  • 怪しいメールの説明
責任を伴う人
  • アカウントの作成・停止と権限(使える範囲)の設定
  • 契約・解約と業者の選定
  • 感染が疑われる時の判断
  • AIの出力の確認と差し戻し
工程 01 / 06

パソコン・機器

台帳・入れ替え・サポートの期限

会社のパソコンが何台あるか、すぐには答えられません。

仕事の道具そのものです。どの機器を誰が使い、いつ買ったかが分からないと、更新も入れ替えも守りも始まりません。

73万円

サイバー攻撃などの被害にあった中小企業の被害額の平均です。最大は1億円、100万円以上は9.4%でした。復旧までは平均5.8日かかり、約7割で取引先にも影響が出ています。

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-02-14 速報・2024年10〜11月調査・n=4,191)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

製造業(金属加工)・10人
匿名事例

受発注の管理をインターネット経由のシステムに移した時、何を守ればよいか分からなかった。総務と兼任の担当者が、自治体と地域の産業振興機構に相談し、専門家の紹介を受けて学んだ。その知識で、Wi-Fi機器の安全のための設定を見直した。外からの通信を防ぐ仕組み(ファイアウォール)では、使っていない出入口(ポート)を閉じた。不審なメールの見分け方も、社内に知らせた。

出典: IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録1「中小企業のためのセキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック」 p.7(B社)(新しいタブで開きます)(2026-03-27)

起きていること

  • パソコンの台数・使う人・購入時期をまとめた一覧がない
  • 2025年10月14日にサポート(安全のための更新の配布)が終わった Windows 10 のパソコンが残っている
  • 壊れてから慌てて買い、設定を一から手作業でやり直している
  • 私物のパソコンやスマホで、会社のメールやデータを見ている

経営への影響壊れた・盗まれた・ウイルスに感染した時に、被害がどこまで及ぶか分からない。急な買い替えで、出費と仕事の停止が重なる

定石の打ち手

  • まとめる機器の台帳を1枚にする。台数・使う人・購入時期・OS(Windows などの基本ソフト)・保守の期限を書く
  • なくすサポートが終わったOSのパソコンを、社内からなくす
  • 入れ替える壊れてから買うのをやめ、購入時期から入れ替えの年を決めて予算に入れる
  • 仕組みにする初期設定の手順書を作り、新しいパソコンを同じ設定で渡す

生成AIを入れる場所

  • 購入の記録や請求書の写しから、機器の台帳の下書きを作る
  • 台帳から入れ替えが近い機器を抜き出し、社内への連絡文を下書きする
  • 担当者の作業メモから、パソコンの初期設定の手順書を文章に整える

台数や保守の期限は、台帳とメーカーの情報で確かめる。AIの答えを台帳の代わりにしない。

効果を測る指標
  • リスク台帳に載っている機器の割合
  • リスクサポートが終わったOSの台数
  • コスト新しいパソコン1台の準備にかかる時間
  • スピード故障から代わりの機器を渡すまでの日数
工程 02 / 06

アカウント

入社・退職・パスワード・二段階認証

辞めた社員のアカウントが、まだ使える状態かもしれません。

会社のメールやクラウドサービスに入るための鍵です。鍵の配り方と回収の仕方が決まっていないと、機器をいくら守っても入口が開いたままになります。

36.8%

不正アクセスの被害の手口のうち、IDとパスワードをだまし取られたものの割合です。

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-02-14 速報・2024年10〜11月調査・n=4,191・不正アクセスの手口は n=419)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

22.1%
ISOプロ 調査(2026年5月・n=1,019・民間調査)
調査

退職した社員のアカウントの削除や権限の変更を、退職日の当日に済ませている割合。回答者は企業の経営者・経営層・情報システム部門のモニターで、中小企業に限った数字ではない。

出典: ISOプロ「退職者による機密情報持ち出し・不正アクセスのリスクと組織のセキュリティ体制」に関する調査(PR TIMES)(新しいタブで開きます)(2026-05-27)

起きていること

  • 退職者のアカウントを止める手順が決まっていない
  • 同じパスワードを、複数のサービスで使い回している
  • 共有のIDとパスワードを、紙や表計算のファイルで回している
  • パスワードに加えて、スマホなどでも本人を確かめる設定(二段階認証)を使っていない

経営への影響退職者や外部からの不正なログイン、情報の持ち出し、取引先へのなりすましメール

定石の打ち手

  • まとめるアカウントの一覧を作り、誰が何を使っているかを1か所で見る
  • 仕組みにする入社・異動・退職の時の作業をチェックリストにし、人事の手続きとつなぐ
  • なくす共有アカウントを減らし、一人ひとりのアカウントに分ける
  • 入れ替えるパスワードの使い回しをやめ、メールと主なサービスで二段階認証を必須にする

生成AIを入れる場所

  • 入社・退職の連絡から、作るアカウントと止めるアカウントの作業リストを下書きする
  • 社員向けに、二段階認証の設定手順を分かりやすい文章にする
  • 「パスワードを忘れた」などの社内の問い合わせに、手順書をもとに最初の回答をする

アカウントの作成・停止と権限(使える範囲)の設定は、人が確認して行う。AIにパスワードや認証コードを渡さない。

効果を測る指標
  • リスク退職日にアカウントを止めた割合
  • リスク二段階認証の設定率
  • リスク共有アカウントの数
  • スピード入社日から仕事を始められるまでの日数
工程 03 / 06

セキュリティの基本

更新・社外からの接続・バックアップ

ウイルス対策ソフトを入れたので大丈夫だと思っています。

高い製品より先に、基本の穴をふさぐ工程です。不正アクセスの入口の多くは、更新していないソフトや機器と、だまし取られたパスワードです。

48.0%

不正アクセスの被害の手口のうち、更新していないソフトや機器の弱点を突かれたものの割合です。取引先を経由したものも19.8%ありました。

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-02-14 速報・2024年10〜11月調査・n=4,191・不正アクセスの手口は n=419)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

123件
警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
調査

警察に報告されたランサムウェアの被害の件数で、半期として最多。被害にあった組織の約6割が中小企業。被害にあった組織へのアンケートでは、侵入の経路は、社外から社内につなぐ機器(VPN)が約5割。復旧に総額1,000万円以上かかった組織は、アンケートに答えた組織の6割にのぼる。警察に届け出るほどのランサムウェアの被害に限った数字で、中小企業全体の平均(工程01の73万円)より大きくなる。

出典: 警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(新しいタブで開きます)(2026-09-10)

起きていること

  • パソコンやソフトの更新が、社員それぞれの判断に任されている
  • 社外から社内につなぐための機器(VPN)を、置いたまま更新していない
  • バックアップが無いか、あっても社内のネットワークにつながったままで、ウイルスに一緒に壊されるおそれがある
  • 被害にあった時に、誰が誰に何を連絡するかが決まっていない

経営への影響データを人質にとる身代金ウイルス(ランサムウェア)で業務が止まる。出荷や請求が止まり、取引先にも影響が広がる

定石の打ち手

  • 仕組みにする更新を自動にし、更新が止まっているパソコンが無いか、月1回確かめる
  • 入れ替えるVPN機器など社外とつながる入口の機器は、更新と保守を業者との契約に含める
  • まとめるバックアップを1か所に集め、ネットワークから切り離した控えを持つ
  • 仕組みにする被害の時の連絡先と手順を1枚にまとめ、年に1回読み合わせる

生成AIを入れる場所

  • メーカーが出す更新のお知らせを要約し、自社の機器に関係するかを台帳と照らして示す
  • 怪しいメールの文面を読み、どこが怪しいかを説明する
  • 被害の時の連絡手順を、社員が読める1枚の文章に整える

感染が疑われる時の判断(ネットワークから外す、業務を止める)は人が行い、専門家に連絡する。AIの答えを待たない。

効果を測る指標
  • リスク更新が止まっている機器の数
  • リスクバックアップから戻せることを確かめた回数
  • リスク社外とつながる機器の最終更新日
  • スピード異常に気づいてから連絡するまでの時間
工程 04 / 06

契約しているサービスとIT費用

棚卸し・解約・まとめる

毎月ITにいくら払っているか、合計を見たことがありません。

クラウドサービス(インターネット経由で使うサービス)は、申し込みが手軽な分、契約が増え続けます。使っていないサービスの支払いや、辞めた人の分の利用枠が残りやすい工程です。

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

288時間→ほぼ0
しまうまプリント(写真プリントのネットサービス、従業員101〜300人)
実績

社内で使う18のクラウドサービスについて、退職者のアカウントが残っていないかを確かめる棚卸しを、月に約8回、手作業で行っていた。管理ツールで自動にし、年288時間かかっていた作業がほぼなくなった。

出典: Admina 導入事例(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-19 閲覧)

640万円削減
ナイル(企業のデジタル化の支援など、従業員101〜300人)
実績

クラウドサービスなどのシステム費用を見直し、総額640万円を削減した。最も大きいのは、Microsoft 製品の購入先を変えたことによる約450万円。何年分の削減かは公表されていない。管理ツールの会社のコンサルタントの支援を受けた。

出典: Admina 導入事例(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-19 閲覧)

起きていること

  • 部署や個人が、別々にサービスを申し込んでいる
  • 使っていないサービスや、辞めた人の分の利用枠に払い続けている
  • 同じ役割のサービスを、複数契約している
  • 更新日と解約の期限を、誰も把握していない

経営への影響気づかないうちに固定費が積み上がる。会社が把握していないサービスに、会社の情報が置かれる

定石の打ち手

  • まとめる契約しているサービスの一覧を作る。名前・用途・月額・利用者・更新日・担当者を書く
  • なくす使っていないサービスと利用枠を解約する
  • まとめる同じ役割のサービスを一つに寄せる
  • 仕組みにする申し込みを届け出制にし、更新日の前に見直す

生成AIを入れる場所

  • カードの明細や請求メールから、契約しているサービスの一覧を下書きする
  • サービスの利用規約を読み、解約の期限やデータの扱いを抜き出す
  • 似た役割のサービスを並べ、まとめる候補を理由つきで示す

解約と契約の判断は人が行う。費用の合計は明細の数字で出し、AIに計算させない。

効果を測る指標
  • コストITに払っている月額の合計
  • コスト使われていない利用枠の数
  • リスク一覧に載っていないサービスの数
  • コスト棚卸しにかかる時間
工程 05 / 06

生成AIを使うルール

使ってよいサービス・入れてよい情報

社員が生成AIを使っているかどうか、把握していません。

生成AIは、禁止しても個人の判断で使われます。止めるより先に、使ってよいサービスと入れてよい情報を1枚のルールにまとめる工程です。

38.7%

生成AIについて、会社としての方針を決めていない中小企業の割合です。「個人で活用していることもある」と答えた中小企業は27.7%でした。

出典: 東京商工リサーチ「『生成AI』に関するアンケート調査」(新しいタブで開きます)(2026-04-27公表・2026年3〜4月調査・n=6,327、うち中小企業5,872・民間調査)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

28時間相当/月
ペンシル(Webコンサルティング、社員約140人)
実績生成AI

生成AIの導入に当たり、使い方と禁止事項を示したガイドラインを作った。約1か月の試験導入で、11部門の140業務に使い、合計で月28時間相当の作業を減らした。

出典: 労働新聞(新しいタブで開きます)(2024-07-31)

起きていること

  • 会社としての方針が無く、使うかどうかが個人任せになっている
  • 無料のサービスに、顧客や取引先の情報が入力されているかもしれない
  • AIの出力を確かめないまま、社外向けの文書に使っている
  • 入力した情報が、AIの学習(性能を上げるための材料)に使われるかどうかを、誰も確認していない

経営への影響顧客や取引先の情報の流出、誤った内容の社外への発信、著作権などの権利の問題

定石の打ち手

  • 入れ替える全面禁止をやめ、ルールの範囲で使ってもらう
  • まとめる入れてよい情報と入れてはいけない情報を、1枚のルールにまとめる
  • 仕組みにする使ってよいサービスを決め、会社の契約で使う
  • 仕組みにする社外に出す文書は、人が確かめてから出すと決める

生成AIを入れる場所

  • 公的なガイドラインのひな形をもとに、自社のルールの下書きを作る
  • 社員からの「これは入力してよいか」という質問に、ルールを根拠に答える
  • 議事録・メール・要約など、よく使う作業の手本を作る

ルールを決めるのは経営者。何を入力してよいか、誰が最終判断するかをAIに決めさせない。

効果を測る指標
  • リスクルールを読んだ社員の割合
  • リスク会社の契約で使っている人の割合
  • コストAIで短くなった作業時間(件数 × 1件あたりの時間)
  • 判断の質AIの下書きをそのまま使えた割合
工程 06 / 06

担当の決め方と外部の使い方

兼任・社外の相談先・支援サービス・補助金

ITのことは、詳しい社員に頼んでいます。

中小企業では、ITの専任の担当者がいないのが普通です。大事なのは専任を雇うことより、誰が見るかを決め、一人で抱えさせないことです。

9.3%

情報セキュリティ専門の部署や担当者がいる中小企業の割合です。兼任の担当者を任命しているのは21.0%でした。

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(新しいタブで開きます)(2025-02-14 速報・2024年10〜11月調査・n=4,191)

各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。

61.1%
ノークリサーチ 調査(2025年・年商500億円未満の中堅中小企業・回答数は記事に記載なし・民間調査)
調査

情報システムの担当者のうち、他の業務と兼ねる人の割合が、2023年の48.0%から61.1%に増えた。担当が1人の企業も21.3%から24.5%に増えた。

出典: @IT「『孤軍奮闘型の情シス』の割合が増加、さらに『兼任化』も進む」(ノークリサーチ調査)(新しいタブで開きます)(2025-10-17)

建設業・30人
匿名事例

取引先がサイバー攻撃で、データを置くコンピュータ(サーバ)のデータをすべて失い、業務が止まった。それを見て、対策を始めた。取引のあるITの業者に相談し、Webサイトの作成を担当している社員を、セキュリティの担当として兼任で任命した。分からないことは業者に聞きながら、OSとソフトの更新、ウイルス対策、バックアップを始めた。

出典: IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録1「中小企業のためのセキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック」 p.5(A社)(新しいタブで開きます)(2026-03-27)

起きていること

  • ITに詳しい社員が、本業の合間に頼まれ仕事として対応している
  • その社員が休む・辞めると、設定もパスワードも分からなくなる
  • 困った時に相談できる、社外の窓口が無い
  • 補助金や公的な支援を、締め切りが過ぎてから知る

経営への影響担当者が辞めると社内のITが止まる。本業の時間が削られる。業者に言われるまま契約する

定石の打ち手

  • 仕組みにするIT担当を兼任で正式に任命し、ITに使う時間と範囲を決める
  • まとめる台帳・アカウント一覧・契約一覧・手順書を1か所に置き、二人目が見られるようにする
  • 入れ替える詳しい社員への頼み事をやめ、社外の相談先と保守の契約に任せる範囲を決める
  • 仕組みにする中小企業向けに、ネットワークやパソコンの見張りなどをひとまとめにした民間のサービス(サイバーセキュリティお助け隊サービス)や国の補助金を、年度の計画に入れる

生成AIを入れる場所

  • 担当者の作業メモから手順書を作り、更新して、一人に頼る状態をほどく
  • 業者の見積や提案書を読み、確かめるべき点を並べる
  • 補助金の募集の案内(公募要領)を要約し、自社が対象になるかの確認事項を並べる

業者の選定と契約、補助金の申請は経営者が判断する。補助金の要件は、AIの要約ではなく公募要領の原文で確かめる。

効果を測る指標
  • リスク二人目が読める手順書の割合
  • コスト兼任の担当がITに使う時間(月)
  • スピード困りごとから解決までの日数
  • リスク社外の相談先と保守の契約の有無

全体像

最初から最後まで、何が変わるか。

6つの工程の「いま」と「改善後」、そして効果を確かめる指標を一覧にします。

  1. 01パソコン・機器
    いま台数も使う人も分からない。壊れてから買う
    改善後機器の台帳と計画的な入れ替え。AIが台帳と手順書を下書き
    効果を測る指標台帳に載っている機器の割合/サポートが終わったOSの台数
  2. 02アカウント
    いま退職者のアカウントが残る。パスワードの使い回し
    改善後アカウント一覧と入社・退職の手順。二段階認証を必須に
    効果を測る指標退職日にアカウントを止めた割合/二段階認証の設定率
  3. 03セキュリティの基本
    いま更新は各自任せ。バックアップから戻せるか試したことがない
    改善後自動更新と、ネットワークから切り離したバックアップ。被害時の手順を1枚に
    効果を測る指標更新が止まっている機器の数/戻せることを確かめた回数
  4. 04契約しているサービスとIT費用
    いま契約がばらばらで、月額の合計が分からない
    改善後契約一覧と解約・統合。AIが明細と規約を読む
    効果を測る指標ITの月額の合計/使われていない利用枠
  5. 05生成AIを使うルール
    いま方針が無く、個人任せで使っている
    改善後1枚のルールと会社の契約。AIの下書きは人が確かめる
    効果を測る指標ルールを読んだ社員の割合/下書きをそのまま使えた割合
  6. 06担当の決め方と外部の使い方
    いま詳しい社員の頼まれ仕事
    改善後兼任の正式な任命と社外の相談先。手順書で二人目へ引き継げる形に
    効果を測る指標二人目が読める手順書の割合/困りごとの解決日数

効果は、連鎖して現れる。

守りも費用の見直しも、一覧が無いと始まりません。見直しは、把握から順に進めます。生成AIのルールだけは、並行して始めて構いません。

  1. 工程01・02で、持っているものを把握する

    機器とアカウントの一覧ができ、守る範囲と止める鍵が分かる。

  2. 工程03・04で、穴と無駄を減らす

    更新・二段階認証・バックアップがそろい、使っていないサービスへの支払いが止まる。

  3. 工程05・06で、続く形にする

    生成AIのルールと担当が決まり、一人に頼らずに見直しが続く。

効果の測り方

指標は、3層に分けて測る。

経営層に報告するのは一番上の層です。「導入したツールの数」や「AIの利用回数」は活動の量であって、成果ではありません。

約26万円

IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」と同じ項目で点数をつけた時、100点だった企業の被害額の平均です。50〜69点の企業では約134万円でした。点数が高い企業ほど被害額が小さい傾向を示す数字です。点数を上げれば被害が減ると証明したものではありません。

出典: IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 業種ごとの効果的な取組事例集」(新しいタブで開きます)(2025年5月)p.2

経営成果 ── 経営層に報告
  • 情報の流出・業務の停止などの事故件数
  • 業務が止まった日数
  • ITに払っている月額の合計
  • 兼任の担当がITに使う時間
業務指標 ── 担当が管理
  • サポートが終わったOSの台数
  • 退職日のアカウント停止率
  • 二段階認証の設定率
  • バックアップから戻せることの確認回数
活動指標 ── 担当が管理
  • 台帳・一覧に載っている割合
  • 手順書の数
  • 生成AIのルールを読んだ社員の割合
  • AIの下書きをそのまま使えた割合
着手前に、一覧を作って数える機器の台数、アカウントの数、契約の数と月額。数えた時点が、後で比べる基準になります。
自社診断で点数をつけるIPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で、着手前と後の点数を比べます。
費用は月額の合計で示す解約や統合の効果は、「何をやめたか」ではなく月額の合計の差で示します。
AIは、そのまま使えた割合と直す時間で評価するAIの下書きをそのまま使えた割合と、直すのにかかった時間を測ります。手で作るより遅いなら、使い方を見直します。

進め方

4つの段階で進める。

期間は、社員数十人の会社を想定した目安です。最初の1か月で、見る人を決めて数えるところまで進めます。

  1. 0〜1か月見る人を決め、数える
    • IT担当を兼任で任命
    • 機器・アカウント・契約の一覧づくり
    • 自社診断で今の点数をつける
  2. 1〜3か月基本の穴をふさぐ
    • 更新を自動にし、サポートが終わったOSを洗い出す
    • 二段階認証とパスワードの見直し
    • バックアップと被害時の連絡手順
  3. 2〜6か月なくす・まとめる
    • 使っていないサービスと利用枠の解約
    • 入社・退職の作業を手順にまとめる
    • 社外の相談先と保守の契約の整理
  4. 最初の月から生成AIのルールを1枚に
    • 使ってよいサービスを決める
    • 入れてよい情報を決める
    • 小さな作業から使い始める

生成AIのルールづくりは、他の段階を待たずに始めて構いません。ルールが無いまま個人で使われている状態を、早く終わらせる方が安全です。

生成AIを仕事に入れる時の決まりごと

最終判断は人が行う社外に出す文書、契約、アカウントの権限に関わる出力は、必ず人が確かめてから使います。
根拠を示させるどの規約・どの手順書のどこに基づくかを示させます。根拠を示せない回答は使いません。
入れてよい情報を決める個人情報や取引先の情報を扱う前に、サービスの契約条件(学習への利用、保存場所)を確かめ、ルールに書きます。
会社の契約で使う社員の個人の契約ではなく、会社が契約したサービスを使います。誰が何に使ったかを会社が把握できます。

経営判断

経営者にしか、決められないこと。

社内のITの見直しは、担当者の努力だけでは先に進めなくなる所があります。次の5つは、IT担当の権限では決められません。

  1. IT担当を任命し、時間を与える兼任でも正式に任命し、ITに使ってよい時間と範囲を決めます。頼まれ仕事のままでは続きません。
  2. 守りの予算を年度で決める入れ替え・保守・バックアップの費用を、壊れてからではなく年度の予算に入れます。対策に投資していない中小企業は62.6%です(IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」)。
  3. 生成AIのルールを決めて伝える使ってよいサービスと入れてよい情報は、経営者が決めて全社に伝えます。
  4. 解約と統合を決める使っていないサービスの解約や統合は、使っている部署に反対されても決める人が要ります。
  5. 被害の時に誰が何をするかを決める業務を止める判断、取引先への連絡、専門家への依頼。決めるのは経営者です。
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