生産ラインごとに業務の手順や機械の操作を洗い出し、従業員一人ひとりの技術の段階を見える化した。どの作業も、標準的な作業ができる人が2人以上になるよう育成計画を立て、計画的に訓練した。成果として、技術の段階が見えるようになったことや、休みを取りやすい体制になったことが挙げられているが、数字は示されていない。
出典: 広島県『働き方改革取組マニュアル・事例集「取組アイデア編」』(長時間労働の削減 編)p.3(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-24 閲覧)
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作成: 中川 健太(作家・中川)公開: /更新:
中小企業の経営者のための 人の育成の見直しと生成AI
仕事のやり方が、ベテランの頭の中にしか無い。そのベテランが辞めたり定年を迎えたりすると、仕事が止まります。しかも、教える人も、教える時間も足りない。まず、会社の仕事を書き出し(棚卸し)、誰がどの仕事をどこまでできるかを1枚の表にして、目で見て分かる形にします(見える化)。この表をスキルマップと呼びます。次に、誰でも同じ手順で教えられる形にし、1人が複数の仕事をこなせるように育てます。複数の仕事をこなせる人を多能工、そう育てることを多能工化と呼びます。生成AIの使い所も、そこから決まります。
この資料の結論
大学を卒業して就職した人が3年以内に辞めた割合は、就職した事業所(職場)の規模が5〜29人で50.6%、1,000人以上で24.2%です(厚生労働省)。教える仕組みも、小さい会社では薄い。JILPT(労働政策研究・研修機構)の調査で、OJT(職場で仕事をしながら教えること)として行っている取り組み(複数回答)を見ます。9人以下の企業で、一人ひとりの教育訓練の計画を作っているのは8.3%、専任の教育係を付けているのは6.9%でした。企業全体では、それぞれ12.4%、12.2%です。
厚生労働省の能力開発基本調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所が80.1%でした。この調査の対象は、常用労働者(期間を決めずに雇っている人など)が30人以上の事業所で、それより小さい所は含みません。問題点(複数回答)で最も多いのは「指導する人材が不足している」で、59.5%です。「人材を育成しても辞めてしまう」51.6%、「人材育成を行う時間がない」45.5%が続きます。教える人も時間も足りないなら、教え方を人任せにせず、誰でも同じ手順で教えられる形にします。製造業の別の調査では、技能の引き継ぎ(技能継承)がうまくいっている(「ややうまくいっている」を含む)企業に、その理由(複数回答)を聞いています。最も多いのは計画的なOJT(何を、いつまでに、誰が教えるかを決めて行うOJT)で、40.4%でした(JILPT の調査・従業員30人以上の製造業)。
能力開発基本調査(常用労働者30人以上の事業所が対象)で、技能の引き継ぎのための取り組み(複数回答)を見ます。最も多いのは、中途採用を増やしている事業所で、56.2%です。次いで、定年などで辞める人から選んで、雇用を延長したり再雇用(定年を迎えた人などを、引き続き雇うこと)したりして指導者にしている事業所が54.7%でした。辞める予定の人のノウハウ(仕事のこつ)を文書やマニュアルにしている事業所は、22.0%です。製造業の別の調査では、技能の引き継ぎが必要と考える企業のうち、うまくいっている(「ややうまくいっている」を含む)と答えたのは33.3%です。デジタル技術を使う目的(複数回答)に技能の引き継ぎを挙げた企業は、回答した企業の21.7%でした。その企業が挙げた効果(複数回答)では、引き継ぐべき技術の見える化・標準化(誰がやっても同じやり方にすること)が77.8%でした(JILPT の調査・従業員30人以上の製造業)。再雇用で時間を稼ぐ間に、こつを記録に残し、多能工化でその仕事ができる人を増やします。
症状チェック / 約3分
当てはまる症状が多い工程ほど、見直す余地が大きくなります。当てはまった数が最も多い工程を、最初に見る工程として示します。6つの工程すべてに当てはまった時は、工程01から順に見ることを勧めます。
6つの工程
仕事を書き出し、教える形を決める。入社した人を迎え入れ、1人が複数の仕事をこなせるようにする。ベテランのこつを残し、覚えたことを評価する。工程01のスキルマップが、後の工程すべての土台になります。
改善の定石
業務改善の定石は、なくす・まとめる・入れ替える・仕組みにする、の順に考えることです(英語の頭文字から ECRS と呼びます)。人の育成でも考え方は同じです。要らない仕事を教えず、教えることを1枚の計画にまとめ、口での説明を手順書に替え、教える役と時間を決まりにします。手順書の下書きに生成AIを使うのは、その後です。
スキルマップの表や研修の記録のように、決まった形で残すものは、表やシステムの方が確実です。生成AIは、ベテランの説明から手順書を下書きする、聞き取りの記録を要約する、といった文章を読み書きする場所で使います。
能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所の割合です。この調査の対象は、常用労働者30人以上の事業所で、それより小さい所は含みません。問題点(複数回答)では、「指導する人材が不足している」が59.5%、「人材育成を行う時間がない」が45.5%でした。教える人も時間も限られる中で、何から手を付けるかを決めるのが定石です。
出典: 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(新しいタブで開きます)(2026-07-31公表・事業所調査・常用労働者30人以上の事業所が対象・p.24)
スキルマップ・誰が何をどこまでできるか
誰が何をできるかは、毎日見ているので分かります。
どの仕事を、誰が、どこまでできるか。社長の頭の中にしか無いと、誰に何を教えればよいかが決まりません。会社の仕事を書き出し、一人ひとりができることを1枚の表にする工程です。この表をスキルマップと呼びます。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
生産ラインごとに業務の手順や機械の操作を洗い出し、従業員一人ひとりの技術の段階を見える化した。どの作業も、標準的な作業ができる人が2人以上になるよう育成計画を立て、計画的に訓練した。成果として、技術の段階が見えるようになったことや、休みを取りやすい体制になったことが挙げられているが、数字は示されていない。
出典: 広島県『働き方改革取組マニュアル・事例集「取組アイデア編」』(長時間労働の削減 編)p.3(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-24 閲覧)
整備部門の業務を棚卸しし、副店長が面談で担当者ごとの技術の段階をつかみ、スキルマップを作った。それをもとに、整備の技術教育をOJTで行った。成果として、副店長の負担の軽減、店舗全体の残業時間の削減が挙げられているが、数字は示されていない。
出典: 広島県『働き方改革取組マニュアル・事例集「取組アイデア編」』(長時間労働の削減 編)p.3(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-24 閲覧)
経営への影響その人しかできない仕事に気づかないまま、本人が休む日や辞める日を迎える。教える順番が決まらず、新人の育ちが遅れる
誰がどの段階かの判断と、教える順番は人が決める。一人ひとりの評価に関わる情報をAIに入れるのは、使ってよいサービスを決めてから。
教える計画・手順書・教える役
うちには、新人に付きっきりで教える余裕はありません。
教える人が足りない。教える時間も無い。だからこそ、教え方を人任せにせず、誰でも同じ手順で教えられる形にする工程です。OJTを、計画と手順書のある形に変えます。
正社員に計画的なOJT(何を、いつまでに、誰が教えるかを決めて行うOJT)を実施した事業所の割合です。この調査の対象は、常用労働者30人以上の事業所で、それより小さい所は含みません。企業の規模別では、30〜49人で44.4%、1,000人以上で78.4%でした。小さい会社の様子は、下の JILPT の調査で補います。
出典: 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(新しいタブで開きます)(2026-07-31公表・事業所調査・常用労働者30人以上の事業所が対象・p.22〜23)
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
月末の報告書づくり(利用者1人あたり1時間以上かかっていた)に生成AIを使い、時間を90%短くしたとしている。ITに不慣れな社員にも、社員どうしで教え合う形で広げた。こうした取り組みをきっかけにした働き方改革で、離職率(辞めた人の割合)は83.3%から7.7%になったとしている。いつの時点からいつの時点への変化かは、記事に書かれていない。
出典: J-Net21(中小機構の中小企業向けサイト)(新しいタブで開きます)(2026-09-18)
9人以下の企業で、OJTとして行っている取り組み(複数回答)に、業務に関するマニュアルを配布していることを挙げた割合。企業全体では22.4%。企業全体で最も多いのは、仕事のやり方を実際に見せていることで、63.9%だった。
出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)調査シリーズNo.257「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」(新しいタブで開きます)(2025-11-19)
経営への影響教える人の手が止まり、その分の仕事が遅れる。新人が一人で仕事ができるまでの期間が延びる
安全に関わる手順と、品質の基準は人が決めて確かめる。AIの下書きは、実際にその仕事をする人が読んで直す。
迎え入れ・相談相手・面談
最近の若い人は、すぐに辞めてしまいます。
大学を卒業して就職した人が3年以内に辞めた割合は、規模5〜29人の事業所で50.6%です。入社してからの最初の数か月に、覚えることと相談する相手を、前もって決めておく工程です。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
規模5〜29人の事業所に、高校を卒業して就職した人が3年以内に辞めた割合。高校を卒業した人の全体では36.9%。大学を卒業した人では、規模5〜29人の事業所で50.6%だった。
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒)」(新しいタブで開きます)(2026-10-23)
能力開発や人材育成に関する問題点(複数回答)で、「人材を育成しても辞めてしまう」を挙げた事業所の割合。問題点の中で2番目に多い。最も多いのは「指導する人材が不足している」で59.5%、「人材育成を行う時間がない」は45.5%だった。常用労働者30人以上の事業所が対象で、それより小さい所は含まない。
出典: 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(新しいタブで開きます)(2026-07-31)
従業員の定着対策(社員が辞めずに働き続けるための取り組み)として重視していること(複数回答)に、能力開発や教育訓練を挙げた企業の割合。最も多いのは、賃金などの処遇を上げることで、64.6%だった。
出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)調査シリーズNo.257「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」(新しいタブで開きます)(2025-11-19)
経営への影響採用にかけた手間と費用が戻らないうちに辞める。残った社員の負担が増える
面談そのものと、本人の悩みへの対応は人が行う。本人の悩みや健康に関わる情報は、AIに入れない。
1人が複数の仕事をこなす
仕事は、得意な人に任せた方が早いです。
1人が1つの仕事しかできないと、誰かが休むたびに仕事が止まります。1人が複数の仕事をこなせるようにする工程です。工程01のスキルマップで、誰に何を覚えてもらうかを決めます。
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
多能工を高く評価する人事評価の仕組みを入れ、ベテランの仕事は2人に引き継ぐ形にした。従業員の半数以上が複数の仕事をこなせるようになり、欠員が出ても作業に穴が開かないという。有給休暇の取得率は約90%になったとしている。
出典: J-Net21(中小機構の中小企業向けサイト)(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-24 閲覧)
パートの従業員に複数の仕事を覚えてもらい、多能工化を進めた。パートの賃金は、仕事を覚えるにつれて毎年上がる仕組みにした。出退勤の時間を自分で決められるフレックスタイム制も入れた。
出典: J-Net21(中小機構の中小企業向けサイト)(新しいタブで開きます)(2024-09-19)
経営への影響誰かが休んだり辞めたりするたびに、仕事が止まる。忙しい持ち場の残業が減らない
誰をどの持ち場に動かすかは、本人と話して人が決める。安全に関わる作業は、必要な資格や教育を確かめてから任せる。
ベテランのこつを、辞める前に残す
ベテランには、定年の後も残ってもらうので大丈夫です。
ベテランの技能やこつは、本人が辞めたり定年を迎えたりすると、会社から消えます。再雇用で時間を稼ぐだけでなく、こつを記録に残し、若手に任せる工程です。
技能の引き継ぎに問題があるとした事業所の割合です。製造業では65.8%、建設業では59.2%でした。この調査の対象は、常用労働者30人以上の事業所で、それより小さい所は含みません。
出典: 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(新しいタブで開きます)(2026-07-31公表・事業所調査・常用労働者30人以上の事業所が対象・p.39)
各社・各機関が公開している情報をもとにまとめたもので、作家・中川の支援事例ではありません。
中小機構の専門家派遣を受け、熟練工(経験を積んだベテランの職人)の作業を仕分けた。溶接以外の作業を運搬・補助の担当に集め、熟練工が溶接に集中できるようにした。1期目の活動で、溶接組立の工程の生産能力が27%増えたとしている。2期目は若手リーダーを加えた部門をまたぐチームで、前後の工程や物の流れを見直し、生産能力は40%増えたとしている。
出典: J-Net21(中小機構の中小企業向けサイト)(新しいタブで開きます)(掲載日不明・2026-10-24 閲覧)
デジタル技術を使う目的(複数回答)に技能の引き継ぎを挙げた企業が、その効果(複数回答)として、引き継ぐべき技術の見える化・標準化を挙げた割合。教育にかかる時間の短縮は55.4%だった。目的に技能の引き継ぎを挙げた企業は、回答した企業の21.7%だった。この21.7%は、デジタル技術を使っている企業の割合ではない。
出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)「ものづくり産業における人材確保・定着と技能継承に関する調査」(新しいタブで開きます)(2026-05-27)
技能の引き継ぎのための取り組み(複数回答)で、定年などで辞める人から選んで、雇用を延長したり再雇用したりして指導者にしている事業所の割合。取り組みの中で2番目に多い。最も多いのは中途採用を増やしていることで56.2%、辞める予定の人のノウハウを文書やマニュアルにしているのは22.0%だった。常用労働者30人以上の事業所が対象で、それより小さい所は含まない。
出典: 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(新しいタブで開きます)(2026-07-31)
経営への影響ベテランが辞めた日に、その作業ができなくなる。品質が落ち、取引先からの注文に応えられなくなる
こつや判断の基準が正しいかは、ベテラン本人が確かめる。AIの下書きを、そのまま正しい手順として使わない。
できることを評価に・研修・国の助成金
仕事を覚えるのは、本人の努力しだいです。
できる仕事が増えても、評価や給料が変わらない。それでは、覚える意欲が続きません。スキルマップを評価につなげ、学び直しの場を用意する工程です。学び直しは、仕事に必要な知識や技能を、働きながら改めて身につけることです(リスキリングとも呼びます)。
9人以下の企業で、2023年度にOFF-JT(会社の指示で、ふだんの仕事を一時的に離れて受ける研修や講習)を実施した割合です。企業全体では31.6%でした。
出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)調査シリーズNo.257「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」(新しいタブで開きます)(2025-11-19公表・2024年10〜11月調査・従業員5人以上の企業・回答6,116社・p.48)
経営への影響覚えても報われないと感じた人から辞める。新しい仕事や機械に対応できる人が育たない
評価と給料は人が決める。AIに評価をさせない。社員の評価や給料の情報をAIに入れるのは、使ってよいサービスを決めてから。助成金の条件は、厚生労働省の案内か労働局で確かめる。
全体像
6つの工程の「いま」と「改善後」、そして効果を確かめる指標を一覧にします。
誰が何をできるかが分からないと、教える順番も、持ち場の入れ替えも、評価も決まりません。見直しは、工程01から順に進めます。技能の引き継ぎは、ベテランの定年の時期から逆算して、早めに始めます。生成AIのルールは、並行して始めて構いません。
一人しかできない仕事が分かる。教える人の手が止まる時間が減る。
新人が相談できる。誰かが休んでも、仕事が止まりにくくなる。
ベテランが辞めても、作業が続く。覚えた人が辞めにくくなる。
効果の測り方
経営層に報告するのは一番上の層です。「作った手順書の数」や「AIの利用回数」は活動の量であって、成果ではありません。人の育成の効果は、出るまでに時間がかかります。辞めた人の割合のように、年単位でしか比べられない指標もあります。工程02のプーラビダの事例のように、いつからいつまでの変化かが分からないと、比べられません。着手前に数え、数えた時期を書いておきます。
製造業で、技能の引き継ぎが必要と考える企業のうち、引き継ぎが「うまくいっている」(1.9%)か「ややうまくいっている」(31.4%)と答えた割合です。うまくいっている(「ややうまくいっている」を含む)企業が挙げた理由(複数回答)で最も多いのは、計画的なOJTで、40.4%でした。自社でうまくいっているかは、感覚ではなく、着手前と後の数字で確かめます。
出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)「ものづくり産業における人材確保・定着と技能継承に関する調査」(新しいタブで開きます)(2026-05-27公表・2025年11〜12月調査・従業員30人以上の製造業(機械・金属など11業種)の企業・回答4,342社・p.4〜6)
進め方
期間は、社員数十人の会社を想定した目安です。最初の1か月で、仕事を書き出し、一人しかできない仕事に印を付けるところまで進めます。
生成AIのルールづくりは、ほかの段階を待たずに始めて構いません。社員の評価や悩みに関わる情報が、個人の判断でAIに入れられている状態を早く終わらせる方が安全です。
経営判断
人の育成の見直しは、担当者の努力だけでは先に進めなくなる所があります。次の5つは、担当者の権限では決められません。